『VALORANT』の年間王者を決める国際大会「VALORANT Champions Tour 2022 Champions」(以下、「VCT 2022 Champions」)が8月31日(水)よりトルコ・イスタンブールで開催中。

いよいよプレイオフがスタートし、気がつけばDay13まで試合は進行している。日本代表として出場した🇯🇵ZETA DIVISONはプレイオフ進出を逃したものの、今年の王者を決める大会ということもあり、国内でも固唾(かたず)を呑んで見守っている。

そんな中、🇺🇸XSET vs 🇪🇺FPX戦のロールバック(やり直し)が決定し物議を醸している。

なぜやり直しになったのか


やり直しの原因となったのが3マップ目のアセント、ラウンド24で起こったあるアビリティーの挙動によるものだった。11:12と🇪🇺FPXがマッチポイントを先行しているものの、🇺🇸XSETが1本でもとればOT(オーバータイム)となって延長戦なる緊迫したラウンド。

アタッカーサイドの🇺🇸XSETは3名生存でスパイクを設置。一方、🇪🇺FPXは2名生存でスパイク解除に向かわなければならないため、かなり苦しい状況といえる。

▲3on2という状況的には有利ともいえる🇺🇸XSETだったが、キルジョイのアビリティー「タレット」の挙動により試合は思わぬ結果となってしまう(https://www.youtube.com/watch?v=fTrUpExGb1Q&t=28704s

しかし気がつけば🇪🇺FPXのShao選手、Ange1選手の素早いリテイクにより🇺🇸XSETは壊滅。キャプテンでもあり出場選手最高齢のAnge1選手がチームを救った輝かしい試合となった。キャスター陣のまとめのひと言で配信を締めくくりDay13もぶじに終了と思いきや、まさかの配信再開。

キャスターの岸大河さんの説明によると「タレットの向きに不具合があった」という公式発表のもと、試合がロールバックされ、やり直しということになったというのだ。

では、その「タレットの向きの不具合」というのは何なのか。それは2on3での取り返しの際、Ange1選手に向かって放たれた🇺🇸XSETのAYRIN選手が設置した「タレット」の挙動によるものだと推測される。公式のTwitterでもロールバックのアナウンスはされており、試合再開は公式サイドによる判断と思われる。



タレットの向きの不具合とは


では、その「タレットの向きの不具合」とは何を示しているのだろうか。試合を振り返ってみると、ガーデン側からAサイトに侵入したAnge1選手に対して、🇺🇸XSETのAYRIN選手が設置した「タレット」が反応し、ガーデン側に射撃をするも、すぐさま「タレット」の死角に逃げたAnge1選手を見失った「タレット」がヘブン側にも射撃をしたことによるものだと推測できる。


このタレットの挙動によりスパイク解除を阻止する🇺🇸XSET側からすると、ガーデンにもヘブンにもタレットが反応したように感じ、ふたつの射線を気をつけながらサイト内を死守しなければならなくなる。しかし、🇪🇺FPXのふたりはガーデン側にしかおらず、結果「タレット」の挙動のためヘブン側を無視することができなかった🇺🇸XSETの選手が壊滅されたという流れになっている。

▲🇪🇺FPXのふたり(青矢印)はガーデン側からスパイクを解除に向かう途中、サイト内にある「タレット」に見つかってしまう。しかし「タレット」がヘブン側(赤矢印)にも射撃をしたため、Aサイトを守る🇺🇸XSET(キルジョイ、KAY/O、ソーヴァの3人)は赤矢印側にも注意する必要があったのだ(出典:https://valoplant.gg/ja/JXARER

改めてそのシーンを振り返ってみると、ヘブンに反応した「タレット」を見てヘブン側を警戒している🇺🇸XSETの選手の姿が確認できる。

▲設置したスパイク付近を守るdephh選手は「タレット」の挙動に反応してヘブンを警戒しているようにも見える(https://www.youtube.com/watch?v=fTrUpExGb1Q&t=28742s

結局ヘブンにいないという結論が出せないまま、ひとり残されたdephh選手は常にヘブンを警戒しており、結果ガーデン側から侵入してきたANGE1選手に倒されてしまう。しかし問題なのは、この「タレット」の挙動が本当に不具合なのかという点だ。

『VALORANT』をあまり知らない読者のためにも、改めてキルジョイというエージェントのアビリティー「タレット」について解説しよう。「タレット」は敵を察知すると自動で反撃を行う固定砲台のようなアビリティーで、敵を視認するとバババッ、バババッと3発ずつ対象に向かって射撃で反撃する。

一方で「タレット」は対象を見失うと直ちに設置した方向へと向きを変え動きを止めるのだが、3発1セットの射撃は止まらないため、視認→射撃開始→1発目→敵を見失って元に向きに戻る→2発目、3発目を射撃という挙動もしてしまう。それについては検証しているユーザーもいて、仕様なのではないかという話もでているのが現状だ。


タレットのこうした挙動は普段のプレイでも見られる挙動なため、このやり直しについて「タレットの向きの不具合って何だよ!」という意見も。釈然としないまま試合がやり直しとなって、SNSが荒れた原因となった。

もう一度試合を振り返ってみると、タレットはガーデン側にいたANGE1選手を視認したあと、すぐさまヘブン側に向きを戻し、ヘブン側に1発、そしてANGE1選手のいるガーデン側に1発、最後に再びヘブン側に1発射撃している。1発目からヘブンに射撃している点は不可解にも思えるが、これは「タレット」の挙動を熟知したANGE1選手のテクニックによるものだとも推測できる。

そういった観点からも🇺🇸XSET側がいちゃもんをつけたんじゃないかというような、🇺🇸XSET側を批難するようなコメントも見られるようになり、さらに事態が大きくなってしまったのだ。

ロールバックの結果、両チームとも白熱した戦いを見せOTへと突入。最終的には🇪🇺FPXが再び勝利を収める結果とはなったものの、逆に🇺🇸XSET側が勝利していた場合、上記のような🇺🇸XSETを良く思っていないユーザーの批難は避けられない流れになったのではないだろうか。

一方で、🇺🇸XSETのコーチは「ラウンドのやり直しを要求していない」旨をTwitterでも投稿していて、なぜ試合がロールバックされたのかというのが、よりいっそう不明確となった。


試合についてSNSに投稿している出場選手もいるが、それぞれの思いがあって当然の内容ともいえる。いわれのない批難を浴びることとなった🇺🇸XSETに、勝利後再戦を求められる🇪🇺FPX。現地時間が深夜にも及ぶ試合からも、彼らの疲弊は計り知れない。




まとめ


納得いかないのは「タレットの向きの不具合」という曖昧な内容で試合がロールバックされたことにつきる。もう少し具体的な説明と、誰がそれを判断したのかというのをRiot側が明確にするべきではないだろうかとも感じる試合だった。Riot側が独断で判断したのであれば、🇺🇸XSETが批難されることもなかっただろうし、視聴者もある程度納得した状態で試合を観戦できたのではないだろうか。

そして、もし今回の「タレット」の挙動が仕様ではなくバグであったのであれば、早急に直すべき挙動であるのは明確で、さらにはその挙動を周知しているのであれば、試合前にチームや視聴者に説明があってもいいのではないかとも感じた。

いち視聴者として見れば、ロールバック後のOTがアツすぎて、そんなことどうでもよくなった。という気持ちも大きいが、年間王者を決める大舞台で起こったアクシデントであることには変わりない。

試合内容が大きく左右されるロールバックについては、もう少し釈然とする発表を求めたいところだ。ただ、ロールバックの後試合は、めちゃめちゃアツイ内容になってるので、まだ見ていない人はそこだけでも観戦してみてほしい。

そしてロールバック後も日本語配信してくれたキャスター陣、運営の方には感謝でしかないっ!


配信アーカイブ
Twitch:
https://twitch.tv/valorant_jpn

YouTube:
https://youtube.com/c/VALORANTjp

© 2020 Riot Games, Inc. All Rights Reserved

関連記事

もっと見る