昨今、eスポーツの盛り上がりは凄まじい勢いで成長を続けている。例えば、『PUBG: BATTLEGROUNDS』に続いてバトルロワイヤルジャンルを再燃させた『Apex Legends』は、その競技シーンであるALGSこと「Apex Legends Global Series」が根強い人気を持っている。2022年6月に行われた「ALGSチャンピオンシップ」の視聴者数は数百万人にのぼり、YEAR 3に突入してもなお、安定した視聴者数を獲得し続けている。
また、2022年のeスポーツシーンに『VALORANT』の躍進の話題は欠かすことができないだろう。2021年は「世界の壁」を崩せずに辛酸を嘗めた日本チームだったが、2022年4月に行われた「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 – Masters Reykjavík」では、日本チーム「ZETA DIVISION」が世界3位という、快挙という言葉で表しきれないほどの偉業を達成した。これまでシューターシーンでは弱小国と言われ続けてきた日本チームが、世界という場でその実力を遺憾なく発揮し、世界に通用するチームが存在することを示したのだ。
そして、6月には国内大会の決勝戦を「さいたまスーパーアリーナ」で開催し、国内eスポーツ史上最高の、2日間で2万6千人を動員した。FPSの試合を観るために、2万6千人がさいたまに足を運んだのである。
▲eスポーツファンに人気の『VALORANT』
これらの盛り上がりにあやかって、実際にそのゲームをプレイしてみたいという方も多いのではないだろうか。最高峰のプレイを見る楽しみのほかに、実際に操作してこそ味わえる、ゲームというインタラクションには、また違った興奮があるはずだ。
ただし、いざ環境を構築するとき、悩むことは多い。どの程度のスペックのPCにしようか、デバイスは何を買おうか、デスクやゲーミングチェアはどのようなものが良いのかなど、無数の選択肢から何が自分にあっているかを見定めるのは難しい。特に見るべき項目の多いモニターも、そのひとつだ。
これは筆者の見解だが、まずコストパフォーマンスを重視するのが良いのではないだろうか。身も蓋もないことを言ってしまえば、なるべく良いものをなるべく安く欲しいわけだ。具体的には、コストパフォーマンスに優れながらも、ゲーミング環境に必要な要素はある程度兼ね備えていて欲しい、ということだ。
本稿で紹介するMSIのゲーミングモニター「G242C」は、そんな「良いものをなるべく安く」という貪欲な感情に素直に答えてくれる製品だ。そしてなにより、前述の「シューティング」を題材にしたゲームであれば、現時点では間違いなく本製品が最適だろう。
23.6インチと湾曲率1,500Rが織りなす「ちょうどよさ」
モニターを選ぶうえで考えるべきポイントは、まず「そもそも何インチにするか」だ。机などとの兼ね合いなどもあるが、シューティングジャンルを重点的にプレイするのであれば24インチ前後が良いと言われている。
なぜなら、24インチ前後が、モニターと向き合った際にしっかりと画面全体を視界に捉えることができるサイズとされているからだ。実際にプロプレイヤーが練習に使用しているものや、世界大会の舞台で採用されているものも、24インチ前後のサイズのものが主流だ。
そういう意味で、23.6インチディスプレイを持つ「G242C」は、シューティングジャンルを遊ぶうえで最も適したモニターのひとつであることがわかる。
また、「G242C」は湾曲率1,500Rの液晶パネルを採用している。「R」で表される値は、湾曲モニターの曲線を円の一部とした場合、その円の半径のサイズだ。つまり、「G242C」の湾曲率1,500Rとは、半径1,500cm(1.5m)の円を、23.6インチサイズに切り取ったものというわけだ。
その値が大きくなるにつれてその曲線は緩くなっていく。この湾曲率はモニターのサイズとの兼ね合いで大きく印象が異なるので一概に「これが良い」というものは存在しないが、23.6インチのディスプレイと湾曲率1,500Rの組み合わせは「ゆるやか」という印象を持った。
湾曲はゆるやかで、画面の中央に集中していると、その湾曲を忘れるほどだ。
これがまた、シューティングジャンルにおけるアドバンテージなのである。
湾曲モニターの利点は、画面の両端にある情報を、視点を大きく動かすことなく自然に得ることができるところにある。シューティングジャンル経験者ならうなずいてくれると思うが、弾が飛んでいく画面中央を基本的に見ていることが多いが、敵は画面の端から突然現れるシチュエーションも少なくない。
そういう場合に、画面両端の情報を少しでも得やすいほうが、アドバンテージを得られるのだ。例えば、ミニマップや残弾数など、画面端に表示された情報をより得やすくなり、戦略を立てるうえで“注視する”ことによるストレスと無駄な動きが軽減される。
▲湾曲のイメージ
筆者は複数の湾曲モニターを体験してきたが、湾曲がキツすぎる製品は、シューティングジャンルにやや不向きな印象を受けた。だが本モデルの「23.6インチ」と「1,500R」の組み合わせは、ほどよい湾曲でしっかりと敵を見つけやすくしてくれると感じた。
高リフレッシュレートや嬉しい機能が盛りだくさん
それだけではなく、「G242C」はリフレッシュレート170hz(オーバークロック時)に対応している。リフレッシュレートとは、1秒間に映し出される絵の枚数を表している。一般的なモニターは60hzであり、1秒間に60枚の絵が映し出されて映像として表示されるが、「G242C」は1秒間に170枚の絵が描画されることで、それだけ動きがなめらかに見えるというわけだ。
これにより、敵の動きがよりなめらかに表示され、敵の突然のピーク(覗き込み)や、素早いキャラクターコントロールなどをしっかりと視認することができる。言わずもがな、リフレッシュレートの高さはシューティングジャンルにおいて大きな優位性を持つ。
また、応答速度も1msと高速であり、実際に使っていて遅延などを感じることは一度もなかった。また、同期機能として「FreeSync Premium」を搭載し、対応のグラフィックボードと接続することで、ティアリング(画面の小さなズレ)やカクつきを抑えることができるほか、暗い場所の視認性を上げる「ナイトビジョン」、目の疲労を軽減する「アンチフリッカー」「ブルーライトカット」機能も搭載されている。
これらは右下背面にあるスティックで操作して設定するが、このメニュー画面のレスポンスも素早くモタツキがない。入力切替にも使用するので、地味だが重要なポイントだ。
また、付属のスペーサーでVESAマウントにも対応する。モニターアームと組み合わせて、よりガッツリ画面に向き合うのも良いだろう。
これだけの機能を持ちながらコストパフォーマンスが良い
ここまで述べてきた通り、ちょうどよいサイズ感と湾曲率、シューティングジャンルにおける重要な機能が詰まっていながら、価格は30,500円前後と、この手のモニターとしてはとても安い。
実売価格は、本稿執筆時点では、PC専門店などでは28,000円前後とみられる。
また、価格比較サイトでは、24インチクラスのリフレッシュレート170Hzで絞り込むと、MSIと他社製品のみがヒットするうえ、他社製品に比べても「G242C」は7000円程度安くなっている。また、ディスプレイポート(DP)での170hz駆動だけでなく、HDMI接続でも165Hz駆動が可能となっている点は、HDMI接続では144hzまでしか出ないモデルも多いなかで、ひとつの大きなポイントとなるだろう。
複数のモニター環境を考えているユーザーは、買い足し要員として活用しても良いかもしれない。
▲HDMI接続での165hz駆動に対応している
つまり、「G242C」は昨今のeスポーツシーンに感化されてスタートを切ろうとしているユーザーにはうってつけ、ということだ。求めやすい価格でありながら、十分なゲーミング性能を持つことで、高水準のゲーミング環境を手軽に手に入れることができるゲーミングモニターと言えるだろう。
G242C製品ページ
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- 量子ドット技術を採用した発色の良さと、170Hzの高リフレッシュレートを両立した高コスパWQHD/27インチゲーミングモニター「MSI G274QPF-QD」レビュー
- ゲーミングモニターを選択するうえで、取捨選択を迫られる場面は少なくない。高いリフレッシュレートを求めると発色が犠牲になったり、発色が良い高リフレッシュレートを求めると高価であったりと、理想的なモニターを見つけるのは案外難しい。 そんな欲張りなユーザーにおすすめしたいのが、量子ドット技術を採用することで美しい発色を実現して170Hzと高いリフレッシュレートに対応し、さらにコストパフォーマンスまでバッチリな27インチのWQHDゲーミングモニターの「G274QPF-QD」だ。そのハイスタンダードなスペックは、エントリーモデルでは物足りないユーザーや、ハイエンドモデルほどの金額は予算的に厳しいというユーザーにうってつけのモニターとなっている。 まず印象深いのが“質感の高さ” まず組み立てながら感じたことは“質感の高さ”だ。コスパの良いモニターとなると外装から安っぽさをどうしても感じてしまうことも少なくない。しかし「G274QPF-QD」は全体にマット仕上げを施すことで、高級感のある印象になっている。細いフレームや背面もシンプルかつスタイリッシュなデザインであり、MSIのロゴもシックで控えめだ。 本モデルは、上位グレードの「Optix MAG274QRF-QD」に対する廉価版というポジションだそう。しかし見た目からは廉価版であることを感じさせない装いである。 また、スタンドとネックは手回しネジで簡単に取り付けることができる(ディスプレイ部分とスタンドはドライバーで2本のネジを留める必要がある)。ネック部分にはケーブルを通す穴も設けられているので、ごちゃつきがちなモニター周りもすっきりとまとめることが可能だ。 VESA(75)にも対応しているので、モニターアームなどにつなげて自由に動かすのも良いだろう。 圧倒的な取り回しの良さ ディスプレイと向き合うなかで大切な機能のひとつである角度調節も、かなりしっかりと対応している。高さ調節は0~130mmで対応しているため、スタンドギリギリのかなり下に下げることができる。モニターの背面へのアクセスも良く、マルチディスプレイ環境では他のモニターと高さを合わせやすい。 チルト(上下方向の角度調節)も-5°~20°で対応。モニターとしっかり向き合う用途で使う場合には、視線とモニターの向きをそろえることで疲労軽減にもつながる。なにより、集中して作業やゲームをしたいときに嬉しい機能だ。 また、スイベル(横方向の角度調節)に対応していることは、FPSなどマウス・キーボードを使ってゲームをするユーザーにはとてもありがたい。というのも、FPSゲーマーはディスプレイと目の距離がとても近い場合が多い(これが目に悪い可能性も否定できないので推奨はできない)。そんなときに効いてくるのが、スタンドとディスプレイの角度の兼ね合いなのだ。 ▲スタンド部分をななめにし、キーボードと沿わせるイメージ スイベルに対応することで、スタンド部分を斜めにしつつ、ディスプレイはユーザー側を向いているという構図を作ることができる。これにより左手で入力するキーボードを自然な形で設置できるので、本モデルはコンパクトなスタンド部分のデザインも相まってとても助かる。 ピボット機能もあり 「G274QPF-QD」はピボット機能(画面回転)にも-90°~90°の間で対応している。これは画面を縦にして使用できるという機能だ。メインモニターの横にサブモニターとして縦置きするも良し、縦に2枚並べて巨大なスクリーンにして使うも良い。 後者の使い方は、画面に常に固定したウィンドウを表示するような用途ではとても便利である。証券会社などのオフィスでは縦画面を駆使して多くのモニターを使っていることも多い。 筆者は普段、メインモニターは横、その両脇にサブモニターをそれぞれ縦置きにして使っている。ゲーマーとしては横方向でメインモニターは外せないが、サブモニターであれば縦で も不便ない。ゲームをしながら見たい情報を置いたり、SpotifyやNetflixを流いたりと、ちょうど良い使い方だ。 そのままで美しい発色の良さ そして、なんといっても「G274QPF-QD」の最大の特徴は量子ドットの搭載で、色純度の高い発色を実現している点だ。量子ドットとは、光の3原色であるRGB(赤・緑・青)を高いレベルで再現可能な技術であり、特定の色に強弱があった従来のLEDに比べてRGB全ての発色が良いことが特徴だ。つまるところ、発色の良い美しい映像を楽しむことができる。 これだけ発色が良いと、ゲームなども当然美しい映像で楽しむことができる。色の感じ方は人それぞれだが、筆者はいつも新しいモニターを触るときは好みの色に調節することが多いが、本モデルではそれを必要としないほど、自然で美しい発色であるような印象を受けた。Display HDR 400にも対応しているので、対応しているゲームタイトルやコンテンツでは自由に調節して楽しむことができる。 スペック的な話をすると、約10億7,300万色の表示色に対応している。色域もsRGBカバー率:99%ととても広いため、クリエイティブ用途でも十分通用するだろう。 OSDではさまざまな設定も可能で自分好みの色味に調節できるほか、ゲームジャンルごとのプリセットなども用意されている。 eスポーツタイトルに嬉しい170Hzリフレッシュレート オーバークロック時には最大170Hzのリフレッシュレートに対応している点も、RAPID IPSパネルを採用した「G274QPF-QD」の強みのひとつだ。リフレッシュレートとは、簡単に説明すると1秒間に描画される画像の枚数を示す数値であり、その値が大きければ大きいほどなめらかな映像を楽しめる。FPSなどのタイトルでは敵の動きがより精細に表示されるため、しっかりと視認することができ、強さに直結するといっても過言ではない。 ゲーミングモニターとして流通しているものの多くが144Hzであることを考えると、170Hzに対応する本モデルは他のモニターに比べてひとつアドバンテージを持っていると言える。なお、DisplayPort接続時は最大170Hz、HDMI接続時は最大144Hzとなっている。 また、DisplayPort Alt Modeに対応したUSB Type-C端子も搭載されている。ノートPCやスマートフォンの映像を手軽に出力することもできる。最大15Wの給電にも対応しているので、マウスやキーボード、スマートフォンの充電などにも活用できそうだ。 もちろんゲーマーに嬉しい機能も豊富に対応している。動きの速いゲームでは必須である残像感を打ち消すアンチモーションブラーや、暗い場所の視認性を上げるナイトビジョンはもちろん、対応するグラフィックボードではG-SYNC Compatibleによって画面のズレやかくつきを防いでくれる。アンチフリッカーとブルーライトカットも搭載しているので、長時間モニターと向き合っていることの多いゲーマーやクリエイターも助かる。 ここまで述べてきた通り、「G274QPF-QD」は発色の良いディスプレイとFPSで圧倒的なアドバンテージを持つ170Hzに対応した、高水準なゲーミングモニターと言える。また、WQHD(2,560 × 1,440)はやはりフルHDと比べて多くの情報を表示できるので、クリエイティブ作業やビジネス用途でもとても心強い。 ▲サムネイルの表示を「大」にしてもこれだけのファイルを表示させることができる 冒頭でも述べたが、本モデルは「Optix MAG274QRF-QD」の廉価版という位置づけであり、PCからディスプレイの調節ができる機能を省いた以外はほぼスペック的に変わりはない。62,800円(価格ドットコム)である「Optix MAG274QRF-QD」に対して、「G274QPF-QD」は55,000円と、その価格差は馬鹿にならない。高コスパで高水準なゲーミングモニターが欲しいなら、選択肢のひとつとして有力な一台である。
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- ようやくこのときがやってきた! 次世代と呼ぶことも憚られるほど発売から月日が経った次世代ハードの PlayStation 5 や Xbox Series X|S が、店頭を中心にネットショップでも購入できるようになってきた。 もちろん、Nintendo Switch も『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』などの注目タイトルが目白押しだ。2022年末から2023年夏ごろまでは、家庭用ゲーム機の存在感が特に強いように感じる。 そこで今回ご紹介するのが、MSIのゲーミングモニター「G323CV」だ。引き締まった黒色が得意なVAパネルを採用した本モデルは、31.5インチというやや大きめなサイズ感と、湾曲率1,500Rのゆるやかな没入感が特徴的な、コストパフォーマンスに優れたモデルである(想定価格は26,200円)。 まずはその外観をチェック! G323CVはコストパフォーマンスに優れたエントリーグレードであるものの、外観はかなりレベルが高いように感じる。というのも、ディスプレイの中心から縁に向かうにつれて薄くなっていくようなデザインであり、ベゼル(モニターの縁)も細い。台座となる足回りもスマートで、デスクに置いても邪魔にならない。設置した際の印象はスタイリッシュに尽きる。 そのうえ、チルト(上下の方向調節)とスイベル(横方向への調節)に対応している点はポイントが高い。特に、スイベルに対応することで、足の位置をそのままにモニターの左右の角度を調節できるため、置く場所が狭いユーザーでも安心だ。 FPSプレイヤーはモニターの足とマウスやキーボードなどのデバイスが干渉することを避けるため、わざとズラした置き方をすることも多く、そういったユーザーにも嬉しい仕様だ。 縦方向の高さ調節やピボット(モニターの回転)には対応していないものの、付属のスペーサーネジを取り付けることでVESA(100)規格のモニターアームに対応しているので、必要に応じて導入することも可能である。 なお、組み立ても簡単だ。足と柱を手回しネジで組み合わせ、ディスプレイへはめ込むだけとなっている。 美しいVAパネルと、様々な用途で発揮される没入感 ゲーミングモニターの多くは、シューター向けに最適な24インチ前後のモデルと、40インチ前後のハイエンドモニター(テレビ)の両極端になっている印象があるが、このモデルはその中間を突いてくれている。 実際にディスプレイを見ていくと、31.5インチというサイズ感は、小さすぎず大きすぎないため、デスクに置くにもちょうど良い。また、黒色の発色に強いVAパネルを搭載することで、特にグラフィックが美しいゲームを遊ぶ際にその真価を発揮してくれる。 引き締まった黒色は、ゲームの世界にあるものをしっかり表現してくれるので、ジメジメとした雰囲気の『DARK SOULS』シリーズなど、暗い場所の多いゲームにもピッタリだ。また、暗所の視認性を上げるナイトビジョンにも対応している。 また、映画やドラマなどの鑑賞にも向いている。というのもG323CVは湾曲率1,500Rのパネルを採用しており、31.5インチではゆるやかな没入感を得ることができる。 湾曲がキツいと没入感は増すものの、どうしても違和感が出てしまうため、モニターから少し離れてゲームをしたり動画鑑賞をしたりするぶんには、このゆるさが心地よい。 筆者は試用期間中にPS5でワーナーゲームの『ホグワーツ・レガシー』をプレイしてみたが、大画面でホグワーツ城の上空を箒で飛び回るのは極上の体験であった。そのほかにも、特にレースゲームやフライトシミュレーションといった、スピードを感じるゲームにおいて、その没入感はひとしおだ。 映画館のスクリーンのような湾曲具合は自然とモニターと向き合う姿勢を作ってくれるので、映画・ドラマなどの鑑賞にはもってこいである。また、ゲーム実況やeスポーツの観戦で、ゲームを「観る」という文化も根付いてきたが、意外なことにFPSタイトルでのeスポーツ観戦時は、湾曲の恩恵を受けやすい。 プレイヤーの歩いているときのスピード感が増幅されるような感覚があり、没入感と相まって今までにない印象を受けた。「湾曲ゲーミングモニターによるeスポーツ鑑賞」を体験してみて欲しい。 ▲Six Invitational 2023より ゲーマーをサポートする機能も充実 なお、G323CVはリフレッシュレート75Hzのパネルを採用している。PCなどに接続すれば、標準的なモニターよりも少し高いフレームレートで遊ぶことができるというわけだ。応答速度も1msと、動きの速いシューティングタイトルなどを遊んでも、実用上で遅延を感じることは全くなかった。 また、同期機能として対応するグラフィックボードと組み合わせることで「AMD FreeSync」も利用でき、カクつきを軽減してくれる。 そのほか、チラつきを抑制するアンチフリッカーと、ブルーライトカット機能も搭載しているので、長時間ゲームしがちなユーザーにもピッタリだ。 やっぱり手軽な家庭用ゲーム機 近年、PCゲーム市場が凄まじい盛り上がりを見せてはいるものの、ゲーミングPCは安価なものでも10万円を超え、おおよそ20万円前後のモデルが台頭している。一方の家庭用ゲーム機は、約6万円(Xbox Series Sは4万円弱)でハイエンドなAAAタイトルを遊ぶことができるとあって、その価格差は言うまでもない。 冒頭でも述べたとおり、2022年の年末~2023年の年始頃から次世代ハードの入手性が高まってきた。もちろん、Nintendo Switch や PS4、Xbox One といった既存のゲームハードで遊んでいるプレイヤーも含め、G323CVであれば大きな画面と美しいグラフィックを楽しむことができる恩恵は十分に受けることができる。 「ハリー・ポッター」のホグワーツ城を中心としたオープンワールドRPG『ホグワーツ・レガシー』もそうだが、狩りゲーとして人気を博しているエレクトロニック・アーツ(開発はコーエーテクモゲームズ)の『WILD HEARTS』など、ここ数ヶ月は家庭用ゲーム機でも遊べるタイトルが豊作である。 年内にはスクウェア・エニックスから待望の『FINAL FANTASY XVI』や、任天堂からはシリーズ最新作『ピクミン4』といった大作も発売が予定されている今、快適な環境で家庭用ゲーム機を遊び倒したいユーザーにおすすめしたいゲーミングモニターだ。 ■G323CV製品ページ https://jp.msi.com/Monitor/G323CV
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- “ちょうど良い”モニターを探しているならコレ!eスポーツからソロゲーまで、多様なニーズに合ったゲーミングモニター「G2412」レビュー
- ゲーミングモニターを選ぶうえで重視するポイントは人それぞれだろう。リフレッシュレートやパネルの種類、発色の良さや解像度、サイズ感、入力端子の数等々、モニターというデバイスはなかなかに奥深い。だが一方で、重視すべきポイントのひとつひとつに詳しくなるには、少々ハードルが高い。 そんなあなたにオススメしたいのが、MSIのゲーミングモニター「G2412」だ。リフレッシュレートは最大170Hz(オーバークロック時)で応答速度1msと、競技的なゲームタイトルに最適なだけでなく、フルHDのIPSパネルによる発色の良い映像を楽しむことができる。つまるところ、さまざまな用途にバランス良く当てはまるというわけだ。 実際に筆者が10日間ほどメインモニターとして「G2412」を使い込んだインプレッションをお伝えする。 高いリフレッシュレートでシューターを有利に 「G2412」には、昨今爆発的な盛り上がりを見せているシューティングゲームにおいて大切な要素をふんだんに盛り込んでいる。まずはディスプレイのリフレッシュレートだ。 1秒間にモニターが表示できる画像の枚数を示すリフレッシュレートは、その数値が高ければ高いほど映像が滑らかになり視認性が上がる。つまり、一般的なモニターの60Hzと、「G2412」の170Hzでは、数倍“ヌルヌル”と見えるというわけだ。 シューティングで敵のキャラクターが一瞬だけ身体を見せたとしよう。もしそれが1秒間だけ視認できたとして、60Hzのモニターでは60回の画像を使ってその敵キャラクターを表示するが、「G2412」では170回表示するというと、その違いの大きさがおわかりいただけると思う。純粋に敵の動きをより細かく表示することが可能なのだ。 ゲーミングモニターのリフレッシュレートは、一般的に60Hz・144Hz・165Hz・240Hzという区切りで市場に出回っている。同価格帯のゲーミングモニターのなかでも、わずかではあるが170Hzというアドバンテージがあるのも嬉しいポイントだ。 また、「G2412」のディスプレイサイズである23.8インチは、プロプレイヤーにも好まれるようなサイズ感であることも付け加えたい。モニターと向き合ったときに視界に画面全体を捉えることができるサイズとされているからだ。そのほか、応答速度も1msととても高速であり、遅延などを感じることはほぼないと言って良い。シューティングを真剣にプレイしようかと考えているユーザーにはピッタリだ。 なお、「G2412」は現在では生産を終了している「Optix G241」の後継モデルという位置づけだ。前モデルの144Hzから170Hzと大幅にパワーアップしているほか、最大表示色とDCI-P3のカバー率が少々落ちているものの、コントラスト比が上がることでメリハリのある映像を楽しむことができる。 コンソールハードで遊びたいユーザーにもピッタリ 述べたとおり、「G2412」PCのシューティングゲームに最適であるが、次世代コンソールハードと接続することでフルHD・120Hzの表示にも対応していることから、PCを持っていない、PCとコンソールを併用したいユーザーにもピッタリである。 “次世代”とは言いつつ、PlayStation 5もXbox Series X/Sも2020年11月の発売から2年以上が経過している。半導体不足等で入手しにくい状況が続いていたが、2023年に入ってからはチラホラ店頭でも見かけるようになってきていて、ネットショップでも再入荷から完売までの時間が長くなっているように感じる。 コストパフォーマンスという面でコンソールハードの優位性は圧倒的に高く、PC版では数十万クラスのスペックが必要なAAAタイトルも、6万円程度で快適に遊べるというのは魅力的であろう。 「G2412」はそんな次世代コンソールの最大リフレッシュレートである120Hzに対応しているため、シューティングゲームのプレイに最適。HDMI入力も2基搭載しているため、複数のハードを接続できるのもひとつポイントだ。 また、発色が良いIPSパネルを採用しているため、AAAタイトルなどの美麗なグラフィックを余すことなく楽しむことができるほか、視野角が178度ととても広いため、座った状態や寝転んだ状態などでも楽しむことができる。 ゲーマーをサポートする機能もしっかり満載 もちろん、ゲーミングモニターとしての機能もしっかりと備わっている。暗いシーンの視認性を上げる「ナイトビジョン」や、黒フレームを挿入することで残像感を抑制する「アンチモーションブラー」などを搭載している。対応のグラフィックボードと組み合わせるとティアリング(ゲーム画面の小さなズレ)やカクつきを抑える「FreeSync Premium」を利用することもできる。 また、目に優しい「ブルーライトカット」や、フリッカー(チラつき)を抑制する「アンチフリッカー」もサポートしている。 画面設定のプリセットとして、FPS・レーシング・RTS・RPGの4つも用意されているので、お好みに合わせて画面の雰囲気を変えることも可能だ。 お好みで27インチの大きなサイズも 「G2412」は23.8インチだが、同等のスペックを有した27インチのモデル「G2722」も存在する。こちらも視野角が広く発色の美しいフルHDのIPSパネルを採用し、最大リフレッシュレートが170Hz、アンチモーションブラーなどのサポート機能もしっかり備わっている。 ▲左「G2412」(23.8インチ)・右「G2722」(27インチ) なお、23.8インチと27インチは結構な差がある。23.8インチであれば、本稿でも述べたが、デスクに置いて向き合ったときに画面全体をしっかり把握することができる。一方の27インチではシンプルにサイズが大きいため、迫力のある映像を楽しむことができる。シューターでは画面端の情報が得にくくなるものの、遠くの敵などを視認しやすい。特に『Apex Legends』のようなバトロワでは、遠くにいる敵をしっかりと見ることができるように感じた。 ▲部屋を暗くすると、IPSパネルの発色の良さが際立つ。左「G2412」(23.8インチ)・右「G2722」(27インチ) プレイスタイルや、デスクの環境に合わせて自分にあったものを選んで欲しい。「G2722」は以前レビューしているので、重複する内容もあるが、合わせて確認して欲しい。 https://e-elements.jp/portal/news/17336/ 述べてきた通り「G2412」は、競技性の高いシューティングからソロで遊びたいAAAタイトルまで、多くの用途をカバーしてくれる。特にシューティングでは、高いリフレッシュレートと応答速度、ナイトビジョンなどのサポート機能が活躍し「ゲーミングモニター」としての優位性を感じることができるだろう。また、美麗なIPSパネルを搭載することで映像鑑賞や一人で遊べるAAAタイトルなどをしっかり楽しむこともできる。 eスポーツタイトルをがっつり遊びたいというユーザーを中心に、さまざまな用途をカバーしてくれる、ゲーマーにとって頼もしい相棒となってくれるだろう。 ■MSI G2412 商品ページ https://jp.msi.com/Monitor/G2412 ■MSI G2722 商品ページ https://jp.msi.com/Monitor/G2722