2023年8月6日(日)、東京ビッグサイトにて遊戯王の世界大会「Yu-Gi-Oh! World Championship 2023」が開催されました。名前のとおりの世界最大規模の国際大会で、略称は「WCS」。日本での開催は2018年の千葉大会以来5年ぶりとなります。

『遊戯王』という名前をまったく聞いたことがない人は、おそらくほとんどいないでしょう。もともとは週刊少年ジャンプで連載されていたマンガからカードゲームに発展し、ゲームボーイアドバンスの『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』をはじめ、ゲームを用いた競技大会も毎年のように行われてきました。
世界大会自体は、実は2023年で19回目を数えるなど長い歴史を誇ります。実はこの数字、『リーグ・オブ・レジェンド』『Counter Strike: Global Offensive』『Dota 2』『ストリートファイター』シリーズなどの世界規模のeスポーツ大会以上に長い歴史を誇っています。
ただ、「eスポーツ」というくくりで言うと、『遊戯王』はやや印象が薄めでした。それは、そもそもデジタルではなくアナログなカードゲームがメインだったことと、「eスポーツ」という言葉が持つ競技色よりも「ゲーム大会の延長戦上」というイメージが強かったこと、そして「高額賞金」「プロリーグ」「プロゲーマー」といった昨今の「eスポーツ」のキーワードが当てはまらない大会だったためだと考えられます。
しかし、今回初めて大会を取材させていただく中で、eSports World編集部としても大きな勘違いをしていたと感じました。日本発祥のeスポーツというと対戦格闘ゲームが真っ先に思い浮かびますが、知名度も歴史も、『遊戯王』の方が世界中に浸透しているとも思えるのです。
絶対的なプレイヤー数を見れば、話はまた違ってくると思います。新規プレイヤーもそれほど多くはないかもしれません。なので、今回は少し違った視点から、「世界に誇れるeスポーツ大会」として「Yu-Gi-Oh! World Championship 2023」をあらためてご紹介したいと思います。
今回の世界大会では、3つの種目が用意されていました。2003年から開催している元祖トレーディングカードゲームの『遊戯王 オフィシャルカードゲーム』(遊戯王OCG)、2017年から競技タイトルとなったモバイルゲーム『遊戯王 デュエルリンクス』、そして今回初めて採用されたオンラインゲーム版『遊戯王 マスターデュエル』の3タイトルです。
eSports World編集部としては、『マスターデュエル』が登場したことでeスポーツ専門メディアとして取材できるようになったというのが正直なところです。アナログカードゲームをデジタル化するという手法は他のカードゲームでも行われており(『シャドウバース』のように逆の例もあります)、オンライン化により世界中の人同士でプレイできるようになった点は、ユーザーの拡大に大きな強みと言えます。

今大会で一番驚いたのは、世界各国のメディアが多数集まっていたことです。会場の一番前に用意されたプレス席で周囲の声を聞いていると、英語、韓国語、中国語、ドイツ語、スペイン語などが聞かれ、おそらくインドや中東のメディアもいたと思います。彼らは自国の選手の取材に聞いていたのだと思いますが、プレス席は常に満席状態でした。
筆者は、日本で開催された国際格式のeスポーツ大会やイベントも多数取材してきましたが、ここまで多様な国々から日本に集まっている光景は見たことがありません。その点は、世界でマンガもゲームも親しまれている『遊戯王』ならでは。昨今流行している『VALORANT』の国際大会「Masters Tokyo」でも、ここまで多様ではなかったように思います。

そんな大会のオープニングは、和楽器ユニット「AUN J クラシック・オーケストラ」による演奏から盛大にスタート。和太鼓の太いビートに、三味線や尺八による「和」の音楽が会場に響き渡り、日本で開催される世界大会ということが強烈に伝わってきます。
そこに登場したのが、LEDのフラッグとウェアを身にまとったダンサーたち。日本の伝統と最新技術の融合は、アナログカードゲームから始まった『遊戯王』から、本大会でデジタルの『マスターデュエル』につながったことの象徴にも思えました。
日本人の私たちにとっては、ステレオタイプな日本らしさを主張しすぎるのも少し違和感を感じるかもしれません。しかし、考えてみれば国際的な競技大会の代表格である「オリンピック」では、その国らしさを前面に押し出した演出は当たり前です。日本発祥の『遊戯王』の大会が、発祥の地の日本で開催されるわけですから、むしろ海外に向けたクールな演出だったと思います。


ショーの後は、3つの種目それぞれに予選を勝ち上がってきたファイナリストたちが登壇。残念ながら日本人選手は勝ち残れませんでしたが、世界の強豪選手たちの登場に盛り上がりは最高潮です。

世界一を決める大会の方は、8月5日(土)、6日(日)ともにオンラインで実況配信が行われ、6日(日)の決勝日はセレモニーも含めて大々的に配信が行われました。
「デュエルリンクスの部」の決勝戦は、イーストアジア代表のYukoo選手と、KCCPランキング4位から勝ち上がったTakagi選手の対決。戦績から言えばYukoo選手が有力かと思われましたが、決勝ではデッキの強みを生かして攻め切ったTakagi選手が勝利しました。

試合後のインタビューでTakagi選手は、「(優勝できて)今までの苦労が報われた気持ちです。大会に向けて、デッキの分析、環境の分析、友達との練習をしてきました。日本に来るのは初めてで、実際に東京での大会に参加できたことが嬉しいです。今日の試合は、自分が使ったデッキが一番安定していたのが勝利につながったのだと思います」とコメント。世界一になって次の目標をうかがうと、「今日、来年も世界一になるという目標ができました」と、早くも次の大会に向けて意欲を見せてくれました。

アナログカードゲームをデジタル化した「マスターデュエルの部」は、3人1組のチーム戦として開催。北米チームのTeam 7(Raye選手、Karmano選手、Jesse Kotton選手)と、欧州チームのsnipehunters(Josh選手、QuantalThink選手、Emre選手)による対決です。特にRaye選手は、過去に小学生部門での優勝経験もあり、優勝候補のひとりと目されていました。
チーム戦というと、先鋒、次鋒といった勝ち抜き戦や星取り戦が一般的ですが、今回は3人が同時に対戦し、2名が勝利したチームが1セットを獲得。それを3勝するまで繰り返すというものでした。画面にはフォーカスしている試合以外に、すでに勝負がついた他の2名の勝ち負けも「RED WON」のようなかたちで表示され、残るひとりにプレッシャーがかかるなど、面白い趣向になっていました。
そんな世界最高峰の戦いを制したのは、欧州のsnipehunters。今回のチームは、もともとドイツ出身同士だったJosh選手とEmre選手に、予選大会で知り合ったオランダ出身のQuantalThink選手を加えたチームで、いずれも予選ではトップに入るほどの実力者ぞろい。それぞれに得意とするデッキと、それでは対応できないデッキを準備して臨んだそうです。

今大会が初採用ということで、『マスターデュエル』で勝つための練習方法については、「とにかく練習、練習あるのみです。特にいろいろな人に伝えているのは、初心者は簡単なデッキを使いたがるけれど、それだけだと自分のスキルを磨くことができません。あえて難しいデッキを使っていくこと、作ったデッキを自分と同じくらいプレイしている人とテストすること、デッキに対する感想などを積極的に取り入れていくことが大切です」とのアドバイスをくれました。

そして、最も歴史が長い「オフィシャルカードゲームの部」は、北米のPaulie Aronsonが、ペルーのJuan Mateo Augusto Renteria Pastor選手を下して優勝を果たしました。
なお、決勝戦での各選手のデッキは、公式サイトにすべて掲載されています。世界最高峰の戦いをぜひご自身の環境でも確かめてみてください。
今回の大会が他のeスポーツと異なる点は、観戦するためには抽選に当たらなければならないということでした。観戦自体は無料でしたが、そもそも当たらなければ参加できません。そのため、会場にいる時点でかなり“引きが強い”人たちだったと言えます。
そんな強運の持ち主にだけ許されたのは、大会観戦だけではありません。大会会場となった東京ビッグサイトのホールひとつとは別に、物販や特別展示、来場者自身のカードを使ってデュエルできるスペースを設けるスペシャルイベントも実施されていました。参加にあたっては、イベント+大会観戦という方と、イベントのみ参加希望の方がおり、イベントは午前と午後で完全に切り分けられていました。


そのスペシャルイベントも充実していました。来場者がWCS採用タイトルで3名1チームを即興で組み、その勝敗に応じてカードスリーブがもらえる「OCG・デュエルリンクス・マスターデュエルチーム対抗戦」や、大会参加選手と対戦できる「WCS2023本戦出場者に挑戦!」では、参加者の勝敗に応じてカードスリーブがプレゼントされるとあって、大勢が参加していました。また、「ラッシュデュエル デュエルコーナー」では、来場者同士がプレイするだけでなく、仮面をかぶったインストラクターと対戦できるスペースも用意されていました。




試合後、マスターデュエルの部で優勝したsnipehuntersの選手に「この大会には高額な賞金などはありませんが、それでも『遊戯王』をプレイしている理由はなんですか?」とたずねてみました。世界大会が開催されているカードゲームのeスポーツ大会は他にもたくさんあり、プロとして活動している選手もいるからです。
しかし、彼らの答えは至ってシンプルでした。
「始めた時から遊び続けることが自分にとっては大事なことでした。特に欧州ではいろいろなイベントが開催されているので、いろいろな地域、国で、いろいろな人とプレイできることが非常に楽しみなんです」
「『遊戯王』をとても愛しているし、もう趣味というかライフスタイル。競技志向が高いので、常にベストでありたいというのが自分にとってのモチベーションです」
「お金が欲しくないと言えば嘘になるけど、今回も『遊戯王』をプレイすることで日本に来られてとてもうれしい。『遊戯王』というゲームを愛しているし、いかにプレイし続けられるか、が大切なんです」
選手の誰もが語っていたのは、純粋な『遊戯王』という物語とゲームへの愛でした。おそらくファンの方々も大会出場を目指しているプレイヤーの方々も、同じ思いなのではないでしょうか。それは大会主催者も同様だと思います。
当選者の人数などは公開されていませんが、ホールを『遊戯王』ファンが埋め尽くしていた会場の光景は壮観でした。チケット制で運営されている売上も必要な大会では、巨大な会場のために、端の方は画面しか見えないといったケースもあるかもしれません。
しかし、東京ビッグサイトのホールの規模と今回の席の配置からすると、ほぼどの席からも同様に戦いの様子が見られる、純粋に試合を見たいファンにとっては適正な規模だったように思えます。

昨今のeスポーツ大会の評価は、いかに人を集めたか、いかに同時視聴者数が多かったか、といった数字ばかりが取り沙汰されがちです。たしかにビジネスとして考えれば圧倒的に重要なのは数字であり、売上かもしれません。
ただし、こうした人気タイトルで増えているのは、プレイヤーよりも「観戦勢」。ショーとしてのeスポーツをチケット代を払って観にきてくれるというのは、まさにプロスポーツのビジネスとして正しい進化のかたちだと思います。そして、それがいまのeスポーツ市場を活性化させる起爆剤になっていることも事実です。
それに対して、『遊戯王』のようなカードゲームは、観戦にもカードの知識が必要ですし、ゲーム自体を知らない方が初めて会場に来てもなかなか楽しめないでしょう。つまり、観客にも視聴者にも『遊戯王』のプレイヤーの比率が高いと考えられます。
そう考えれば、今大会の規模は数万人の観客を集める大会と比べても十分に大きく、そのゲームのファンが確実に楽しめるイベントを提供しつつ、ファンも一体となって世界大会を作り上げている稀有なイベントだと感じられました。今回の世界大会を取材できたことで、これからのeスポーツ大会の取材の際にも、単に規模や観客数だけでは測れない本質を、読者のみなさまにもお伝えしていきたいと心を新たにしました。
ちなみに、『遊戯王』カードゲーム25周年を記念したスペシャルイベント「遊戯王デュエルモンスターズ 決闘者伝説 QUATER CENTURY」が、2024年2月3日(土)〜4日(日)に東京ドームで開催されることも決定しています。日本が誇るeスポーツタイトルのひとつである『遊戯王』のイベントが、さらに大きな規模でどのように開催されるのかが楽しみです。
Yu-Gi-Oh! WORLD CHAMPIONSHIP 2023
https://www.konami.com/yugioh/worldchampionship/2023/ja/
遊戯王オフィシャルサイト
https://yu-gi-oh.jp/

会場入口に掲げられた大会パネル。多くのスポンサーもついている
『遊戯王』という名前をまったく聞いたことがない人は、おそらくほとんどいないでしょう。もともとは週刊少年ジャンプで連載されていたマンガからカードゲームに発展し、ゲームボーイアドバンスの『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』をはじめ、ゲームを用いた競技大会も毎年のように行われてきました。
世界大会自体は、実は2023年で19回目を数えるなど長い歴史を誇ります。実はこの数字、『リーグ・オブ・レジェンド』『Counter Strike: Global Offensive』『Dota 2』『ストリートファイター』シリーズなどの世界規模のeスポーツ大会以上に長い歴史を誇っています。
ただ、「eスポーツ」というくくりで言うと、『遊戯王』はやや印象が薄めでした。それは、そもそもデジタルではなくアナログなカードゲームがメインだったことと、「eスポーツ」という言葉が持つ競技色よりも「ゲーム大会の延長戦上」というイメージが強かったこと、そして「高額賞金」「プロリーグ」「プロゲーマー」といった昨今の「eスポーツ」のキーワードが当てはまらない大会だったためだと考えられます。
しかし、今回初めて大会を取材させていただく中で、eSports World編集部としても大きな勘違いをしていたと感じました。日本発祥のeスポーツというと対戦格闘ゲームが真っ先に思い浮かびますが、知名度も歴史も、『遊戯王』の方が世界中に浸透しているとも思えるのです。
絶対的なプレイヤー数を見れば、話はまた違ってくると思います。新規プレイヤーもそれほど多くはないかもしれません。なので、今回は少し違った視点から、「世界に誇れるeスポーツ大会」として「Yu-Gi-Oh! World Championship 2023」をあらためてご紹介したいと思います。
日本以上に世界の熱狂がハンパない「WCS」
今回の世界大会では、3つの種目が用意されていました。2003年から開催している元祖トレーディングカードゲームの『遊戯王 オフィシャルカードゲーム』(遊戯王OCG)、2017年から競技タイトルとなったモバイルゲーム『遊戯王 デュエルリンクス』、そして今回初めて採用されたオンラインゲーム版『遊戯王 マスターデュエル』の3タイトルです。
eSports World編集部としては、『マスターデュエル』が登場したことでeスポーツ専門メディアとして取材できるようになったというのが正直なところです。アナログカードゲームをデジタル化するという手法は他のカードゲームでも行われており(『シャドウバース』のように逆の例もあります)、オンライン化により世界中の人同士でプレイできるようになった点は、ユーザーの拡大に大きな強みと言えます。

大会が始まる前の会場の様子。巨大スクリーンが複数置かれ、どこからでも見えやすくなっていた
今大会で一番驚いたのは、世界各国のメディアが多数集まっていたことです。会場の一番前に用意されたプレス席で周囲の声を聞いていると、英語、韓国語、中国語、ドイツ語、スペイン語などが聞かれ、おそらくインドや中東のメディアもいたと思います。彼らは自国の選手の取材に聞いていたのだと思いますが、プレス席は常に満席状態でした。
筆者は、日本で開催された国際格式のeスポーツ大会やイベントも多数取材してきましたが、ここまで多様な国々から日本に集まっている光景は見たことがありません。その点は、世界でマンガもゲームも親しまれている『遊戯王』ならでは。昨今流行している『VALORANT』の国際大会「Masters Tokyo」でも、ここまで多様ではなかったように思います。

『デュエルリンクス』で優勝したtakagi選手へインタビュー中の海外メディア。選手も含めて、EU圏の人気は高かった
オリンピックさながらの“和”をテーマにした大会演出
そんな大会のオープニングは、和楽器ユニット「AUN J クラシック・オーケストラ」による演奏から盛大にスタート。和太鼓の太いビートに、三味線や尺八による「和」の音楽が会場に響き渡り、日本で開催される世界大会ということが強烈に伝わってきます。
そこに登場したのが、LEDのフラッグとウェアを身にまとったダンサーたち。日本の伝統と最新技術の融合は、アナログカードゲームから始まった『遊戯王』から、本大会でデジタルの『マスターデュエル』につながったことの象徴にも思えました。
日本人の私たちにとっては、ステレオタイプな日本らしさを主張しすぎるのも少し違和感を感じるかもしれません。しかし、考えてみれば国際的な競技大会の代表格である「オリンピック」では、その国らしさを前面に押し出した演出は当たり前です。日本発祥の『遊戯王』の大会が、発祥の地の日本で開催されるわけですから、むしろ海外に向けたクールな演出だったと思います。

海外からの選手や参加者に日本らしさを端的に伝えてくれる和楽器の演奏

和楽器の演奏をバックに登場したLEDダンサー
ショーの後は、3つの種目それぞれに予選を勝ち上がってきたファイナリストたちが登壇。残念ながら日本人選手は勝ち残れませんでしたが、世界の強豪選手たちの登場に盛り上がりは最高潮です。

北米、韓国、ドイツ、オランダなど、さまざまな地域から集結したデュエリストたち
賞金よりも名誉をかけて戦う世界各国の選手たち
世界一を決める大会の方は、8月5日(土)、6日(日)ともにオンラインで実況配信が行われ、6日(日)の決勝日はセレモニーも含めて大々的に配信が行われました。
「デュエルリンクスの部」の決勝戦は、イーストアジア代表のYukoo選手と、KCCPランキング4位から勝ち上がったTakagi選手の対決。戦績から言えばYukoo選手が有力かと思われましたが、決勝ではデッキの強みを生かして攻め切ったTakagi選手が勝利しました。

試合後のインタビューでTakagi選手は、「(優勝できて)今までの苦労が報われた気持ちです。大会に向けて、デッキの分析、環境の分析、友達との練習をしてきました。日本に来るのは初めてで、実際に東京での大会に参加できたことが嬉しいです。今日の試合は、自分が使ったデッキが一番安定していたのが勝利につながったのだと思います」とコメント。世界一になって次の目標をうかがうと、「今日、来年も世界一になるという目標ができました」と、早くも次の大会に向けて意欲を見せてくれました。

アナログカードゲームをデジタル化した「マスターデュエルの部」は、3人1組のチーム戦として開催。北米チームのTeam 7(Raye選手、Karmano選手、Jesse Kotton選手)と、欧州チームのsnipehunters(Josh選手、QuantalThink選手、Emre選手)による対決です。特にRaye選手は、過去に小学生部門での優勝経験もあり、優勝候補のひとりと目されていました。
チーム戦というと、先鋒、次鋒といった勝ち抜き戦や星取り戦が一般的ですが、今回は3人が同時に対戦し、2名が勝利したチームが1セットを獲得。それを3勝するまで繰り返すというものでした。画面にはフォーカスしている試合以外に、すでに勝負がついた他の2名の勝ち負けも「RED WON」のようなかたちで表示され、残るひとりにプレッシャーがかかるなど、面白い趣向になっていました。
そんな世界最高峰の戦いを制したのは、欧州のsnipehunters。今回のチームは、もともとドイツ出身同士だったJosh選手とEmre選手に、予選大会で知り合ったオランダ出身のQuantalThink選手を加えたチームで、いずれも予選ではトップに入るほどの実力者ぞろい。それぞれに得意とするデッキと、それでは対応できないデッキを準備して臨んだそうです。

今大会が初採用ということで、『マスターデュエル』で勝つための練習方法については、「とにかく練習、練習あるのみです。特にいろいろな人に伝えているのは、初心者は簡単なデッキを使いたがるけれど、それだけだと自分のスキルを磨くことができません。あえて難しいデッキを使っていくこと、作ったデッキを自分と同じくらいプレイしている人とテストすること、デッキに対する感想などを積極的に取り入れていくことが大切です」とのアドバイスをくれました。

思わず目頭を押さえるsnipehuntersリーダーのJosh選手
そして、最も歴史が長い「オフィシャルカードゲームの部」は、北米のPaulie Aronsonが、ペルーのJuan Mateo Augusto Renteria Pastor選手を下して優勝を果たしました。
なお、決勝戦での各選手のデッキは、公式サイトにすべて掲載されています。世界最高峰の戦いをぜひご自身の環境でも確かめてみてください。
トレカならではのスペシャルイベントも大盛況
今回の大会が他のeスポーツと異なる点は、観戦するためには抽選に当たらなければならないということでした。観戦自体は無料でしたが、そもそも当たらなければ参加できません。そのため、会場にいる時点でかなり“引きが強い”人たちだったと言えます。
そんな強運の持ち主にだけ許されたのは、大会観戦だけではありません。大会会場となった東京ビッグサイトのホールひとつとは別に、物販や特別展示、来場者自身のカードを使ってデュエルできるスペースを設けるスペシャルイベントも実施されていました。参加にあたっては、イベント+大会観戦という方と、イベントのみ参加希望の方がおり、イベントは午前と午後で完全に切り分けられていました。

開場から列が途絶えなかった物販コーナー

チーム対抗戦の参加希望者がつくる長蛇の列
そのスペシャルイベントも充実していました。来場者がWCS採用タイトルで3名1チームを即興で組み、その勝敗に応じてカードスリーブがもらえる「OCG・デュエルリンクス・マスターデュエルチーム対抗戦」や、大会参加選手と対戦できる「WCS2023本戦出場者に挑戦!」では、参加者の勝敗に応じてカードスリーブがプレゼントされるとあって、大勢が参加していました。また、「ラッシュデュエル デュエルコーナー」では、来場者同士がプレイするだけでなく、仮面をかぶったインストラクターと対戦できるスペースも用意されていました。

WCS参加者との対戦会は、街のカードショップと同様に対面での対戦

対戦会参加者には、勝者は3つずつ、敗者は1つずつイベント限定カードパックがもらえた


『ラッシュデュエル』の対戦スペースの一角では、「888万人の同胞」たちと対戦可能。いずれも中の人はインストラクターが務めた
観客数や賞金額では測れない『遊戯王』への愛
試合後、マスターデュエルの部で優勝したsnipehuntersの選手に「この大会には高額な賞金などはありませんが、それでも『遊戯王』をプレイしている理由はなんですか?」とたずねてみました。世界大会が開催されているカードゲームのeスポーツ大会は他にもたくさんあり、プロとして活動している選手もいるからです。
しかし、彼らの答えは至ってシンプルでした。
「始めた時から遊び続けることが自分にとっては大事なことでした。特に欧州ではいろいろなイベントが開催されているので、いろいろな地域、国で、いろいろな人とプレイできることが非常に楽しみなんです」
「『遊戯王』をとても愛しているし、もう趣味というかライフスタイル。競技志向が高いので、常にベストでありたいというのが自分にとってのモチベーションです」
「お金が欲しくないと言えば嘘になるけど、今回も『遊戯王』をプレイすることで日本に来られてとてもうれしい。『遊戯王』というゲームを愛しているし、いかにプレイし続けられるか、が大切なんです」
選手の誰もが語っていたのは、純粋な『遊戯王』という物語とゲームへの愛でした。おそらくファンの方々も大会出場を目指しているプレイヤーの方々も、同じ思いなのではないでしょうか。それは大会主催者も同様だと思います。
当選者の人数などは公開されていませんが、ホールを『遊戯王』ファンが埋め尽くしていた会場の光景は壮観でした。チケット制で運営されている売上も必要な大会では、巨大な会場のために、端の方は画面しか見えないといったケースもあるかもしれません。
しかし、東京ビッグサイトのホールの規模と今回の席の配置からすると、ほぼどの席からも同様に戦いの様子が見られる、純粋に試合を見たいファンにとっては適正な規模だったように思えます。

前方のプレス席から見た会場のファンの姿(お顔はぼかしています)
昨今のeスポーツ大会の評価は、いかに人を集めたか、いかに同時視聴者数が多かったか、といった数字ばかりが取り沙汰されがちです。たしかにビジネスとして考えれば圧倒的に重要なのは数字であり、売上かもしれません。
ただし、こうした人気タイトルで増えているのは、プレイヤーよりも「観戦勢」。ショーとしてのeスポーツをチケット代を払って観にきてくれるというのは、まさにプロスポーツのビジネスとして正しい進化のかたちだと思います。そして、それがいまのeスポーツ市場を活性化させる起爆剤になっていることも事実です。
それに対して、『遊戯王』のようなカードゲームは、観戦にもカードの知識が必要ですし、ゲーム自体を知らない方が初めて会場に来てもなかなか楽しめないでしょう。つまり、観客にも視聴者にも『遊戯王』のプレイヤーの比率が高いと考えられます。
そう考えれば、今大会の規模は数万人の観客を集める大会と比べても十分に大きく、そのゲームのファンが確実に楽しめるイベントを提供しつつ、ファンも一体となって世界大会を作り上げている稀有なイベントだと感じられました。今回の世界大会を取材できたことで、これからのeスポーツ大会の取材の際にも、単に規模や観客数だけでは測れない本質を、読者のみなさまにもお伝えしていきたいと心を新たにしました。
ちなみに、『遊戯王』カードゲーム25周年を記念したスペシャルイベント「遊戯王デュエルモンスターズ 決闘者伝説 QUATER CENTURY」が、2024年2月3日(土)〜4日(日)に東京ドームで開催されることも決定しています。日本が誇るeスポーツタイトルのひとつである『遊戯王』のイベントが、さらに大きな規模でどのように開催されるのかが楽しみです。
Yu-Gi-Oh! WORLD CHAMPIONSHIP 2023
https://www.konami.com/yugioh/worldchampionship/2023/ja/
遊戯王オフィシャルサイト
https://yu-gi-oh.jp/
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- 【現地レポート】高校生eスポーツ日本一を決める祭典が「大阪・関西万博」で開催! プロ顔負けの熱い試合に会場は大盛況——「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2025」
- 全国の高校生によるeスポーツ日本一を決める祭典「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2025」が、8月15日(金)~17日(日)にて開催された。特に1番目の競技タイトルは『VALORANT』、全国ベスト4のチームが一堂に会し、熱いバトルを繰り広げる。▲3日間にわたり、計7種目の競技が実施される。15日(Day1)は、ライアットゲームズの『VALORANT』と『リーグ・オブ・レジェンド』の2タイトル そして本イベントが開催されたのは、なんと「大阪・関西万博2025」の会場内。夢洲駅を抜け、会場内に入ると、出迎えるのは超巨大な大屋根リング。そしてイベントが行われるのは、大屋根リングの外周を少しまわった先にあるホールだ。現地の来場者は自由に会場へ入ることができ、観客席には飛び入り参加の方も非常に多かった。▲大屋根リングは生で見ると圧巻の大きさ! この暑い日差しの中、休憩スペースとしても大活躍だ ▲限定デザインのタオルが先着で無料配布。汗を拭いつつ、応援もできるという一石二鳥のグッズ ▲コカ・コーラのテイスティングも実施。キンキンに冷えたコーラは、火照った体を冷ますのに最適だ ▲大会アンバサダーのアンガールズ・田中卓志(左)。スペシャルサポーターのアルコ&ピース・平子祐希と酒井健太(中・右)が登場。芸人がいることでトークもいっそうと盛り上がる ▲観客の多くは、たまたまこの日万博に来ていた来場者がほとんど。ゲームの詳しいルールまでは知らなくとも、場を盛り上げる実況解説と、高校生たちのが見せる熱い試合展開に、会場からは非常に温かい歓声が上がっていた ▲フィストバンプ(グータッチ)を交わし、自身の席へと向かう選手たち。お互いの健闘を称え合う、いわば試合前の挨拶だ 若さが光るアグレッシブな試合展開 昼過ぎから行われた決勝戦では、ルネサンス「Across」 vs ルネサンス豊田「大阪に行くために」の、日本一を決める最後の戦いとなった。▲「大阪に行くために」(画面右)は、驚きの3センチネル構成だ。サッカーに例えるとフォワードがいない状態だという 「Across」が選択したマップはロータス。古代遺跡をモチーフにした、3つのサイトを持つ比較的広めのマップだ。そんな中で、「大阪に行くために」は近年稀に見る3センチネル構成を選択した。▲守備を得意とするキャラクターばかりで、本来ならば攻撃側は苦手なはずだが、攻撃側スタートの「大阪に行くために」は最序盤からラウンドを連取 4点差をつけられた「Across」だったが、特に攻守が交代すると徐々に反転攻勢をかけはじめる。▲試合中盤、8-8という同点の展開にまで持ち込んだ「Across」 だがここで「大阪に行くために」が先に9:12でマッチポイントを決める。13点を獲得すれば勝利のところ、このままあと1点を取りきれば勝利だ。しかし、対する「Across」もこの崖っぷちの状況の中で見事な逆転劇を見せる。22ラウンド目、23ラウンド目と「Across」はギリギリのところで持ちこたえ、じわじわと追いついていく。波乱の展開となり、会場内は声援が飛び交っている。▲早々にマッチポイントを決めた「大阪に行くために」だったが、それに必至に喰らいつく「Across」。1対4という人数不利をひっくり返す見事なクラッチで、会場を大いに沸かせた(https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=eQ6QJoJULlHGC8b4&t=18227) ▲「大阪に行くために」のメンバーにとっては、非常に苦しい展開。背後から追いつかれ、プレーにも焦りが滲み出る しかし迎えた24ラウンド目、堅い守りで徐々に人数を削り、相手を翻弄する「大阪に行くために」。逃げるようにして遠くのサイトへ移動する「Across」だったが、最後は「大阪に行くために」へ軍配が上がった。▲Aサイト、Bサイトとことごとく止められ、消去法で選んだCサイトだったが、人数差にあらがうことはできなかった(https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=rGi9RHP0rw25GtCF&t=18370) ▲優勝の瞬間、思わず抱き合う選手たち。会場からは温かい拍手が湧き上がった 優勝チーム囲みインタビュー ▲優勝チームのルネサンス豊田(大阪に行くために)のメンバー。左からイクラはいくら、reia7sh(れいあ)、JackReacher(じゃっくりーちゃー)、インスモークサンジ、sunday(さんでー)、ursus(あーさす) ——皆さん、ご優勝おめでとうございます。全員:ありがとうございます!——優勝して、率直な感想をお聞かせください。イクラはいくら:優勝できて、めちゃめちゃうれしいです! 緊張ですごくテンパったりしていたんですが、今回の大会で次に向けての課題を見つけられてよかったです。reia7sh:ちょっと危ないところもあったけど、後半になるにつれて、落ち着いていつも通りにプレーができ、優勝することができました。JackReacher:STAGE:0に懸ける思いは段違いだったので、すごく緊張しましたが、この大舞台で優勝できて良かったです。インスモークサンジ:優勝できてめちゃくちゃうれしいです。練習が報われました。sunday:今年はリザーバーとして試合に出場することはなかったんですが、みんなが2連覇を勝ち取ってくれてうれしいです。ursus:もう率直に、超うれしいです。——この万博内で実際にプレーしてみて、なにか感じたことはありますでしょうか?イクラはいくら:会場がすごくデカくて、より勝とうという思いがありました。JackReacher:この先、生きているうちにこの大阪という地で万博が開催されるかどうかは分からないので、そこに足を踏み入れることができてとてもうれしいです。——今大会では、大阪府からのeスポーツに対する支援があったかと思います。環境面など、この支援について感想をお聞かせください。イクラはいくら:当日の車での送迎だったり、できるだけ体力を使わないようにしてくださったので、体感でいつも通りのパフォーマンスが出せるようになったかなと思います。JackReacher:日本ではまだeスポーツが浸透しているとは言えない中で、大阪府がこのような支援をしてくれてとてもうれしかったです。インスモークサンジ:全体的な支援は物すごく厚かったので、選手目線ですごく助かりました。——このSTAGE:0という晴れ舞台、そして今回の勝利が、皆さんにとってどういったものだったか教えてください。reia7sh:STAGE:0は、同い年とか、自分と歳の近い人が出場できる数少ない大会だと思います。ここまでチームで勝てて良かったと思います。JackReacher:高校生活の中で3回しかなく、1年1年が貴重なので、やっぱり練習をすればするほどうまくなって勝つ確率も上がることが実感できました。sunday:このSTAGE:0は、高校生にとっても一種の青春でもあるし、新しい選手の芽を見つけることができる場所でもあるので、もっとこういった大きな舞台がたくさん開催されてほしいですね。勝利については——正直、1年生から3年生の間で3連覇したかったけど、今回は去年のメンバーとともに2連覇を達成することができてうれしいです。ursus:STAGE:0のために、このメンバーで集まって毎日練習してきて、めっちゃ頑張ってきたので、今日はちゃんと勝ちきれてすごくうれしいです。▲優勝トロフィーを掲げる「大阪に行くために」のメンバーたち ——普段の練習というのは、どういうことをされているのでしょうか?reia7sh:スクリム(練習試合)の相手を外部で募集できるサイトがあるんですけど、そこでよくプロチームなどとスクリムをしています。——決勝戦では3センチネルという尖った構成を使用していましたが、これはどういった意図だったのでしょうか?インスモークサンジ:ほとんどのチームがやらない構成なので対策されづらいし、その上セットアップも多くて刺さりやすいという感じだったので、強かったですね。——後半、少し相手に追いつかれる展開もありました。その中で最後勝ちきれた要因とは何でしょうか?ursus:タイムアウト中にコーチが「絶対勝てるよ」と声を掛けてくれて、だいぶ緊張がやわらぎました。▲焦る選手たちを落ち着けるかの如く、コーチによりタイムアウトが発動。選手たちは明確に、このタイムアウトが勝利の要因だと答えた ——チームメイトやコーチ、ご家族などに感謝を伝えたいと思う方がいれば、少し教えていただきたいと思います。JackReacher:お母さんに感謝したいと思います。お母さん……eスポーツは嫌いなんですけど(一同笑い)JackReacher:ゲームそのものが嫌いなんですけど、それでも自分がプロゲーマーになりたいと言うと、それを信じていろいろな支援をしてくれて、ここまで来れたということがすごくうれしいです。サプライズゲスト登場!ステージに現れたのは、まさかの吉村大阪府知事 この日の夕方、『League of Legends』部門の決勝戦が行われる直前のこと、突如としてステージに登壇したのは、この大阪・関西万博開催の立役者である吉村洋文大阪府知事であった。▲報道陣も直前に知らされた知事の登壇。ステージから降りた後、このあと実施される『LoL』部門の決勝戦を観戦していた アンガールズ田中:大阪府は結構eスポーツにも力を入れていると聞いたんですけども。吉村知事:「eスポーツといえば、大阪」と……呼ばれてませんが! そうなれるくらい力を入れたいと思って、今進めています。アンガールズ田中:(STAGE:0は)ずっと東京で開催していたんですけども、万博でやるということで、こちらでやらせていただいて。凄い盛り上がってるんですよ、朝から。吉村知事:ほんまですか?アンガールズ田中:いやいやいや、めちゃめちゃ朝から何回も鳥肌が! 大阪で言うと「さぶいぼ出てもうて~」吉村知事:さぶいぼね(笑)▲「このSTAGE:0が、できればまた大阪でやってもらえたら……」と、知事自ら誘致活動。試合に出場する高校生たちにエールを送りつつ、大阪府全体でeスポーツを盛り上げていくことを宣言した(https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=g56ISY_Wew0tIkCQ&t=31209) ——— 今回のイベントで興味深かったのは、明らかに観客層が通常のeスポーツイベントとは異なっていた点だ。もちろん観客の中には、ゲームのルールを理解している人も多少いたが、その他大勢はeスポーツの試合を見ることすら初めてだという人も多かった。老若男女、本当に幅広い人々が観戦をしていた。だからこそ、競技シーンならば当たり前の「どちらかのチームを応援する」という現象が、今回はあまりなかった。むしろ「どちらも頑張れ」という、温かい声援と拍手が印象的だった。一昔前の価値観からすると考えられないというか、先人たちの努力もあってここまで社会に受け入れられてきたのだと、特に肌で感じた大会であった。今後、日本の競技シーンやその芽となる学生たちにとって、よりいっそう活躍の舞台が広がっていくことを期待したいと思う。なお関西に住む筆者としては、多くのゲーム系イベントが東京で開催される中、このようなイベントを大阪で開催してくれるのは非常に喜ばしい。「eスポーツといえば大阪」と言われるようになるまで、ぜひこの万博をてこにして頑張っていただきたい。■関連リンクSTAGE:0(ステージゼロ)|全国高校対抗eスポーツ大会 公式サイト:https://stage0.jpSTAGE:0(ステージゼロ) 公式X:https://x.com/stage0_jp配信アーカイブ:https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=T9SHUhK4YB-e8lHq撮影:まいる編集:いのかわゆう【まいるプロフィール】関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
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- 【結果速報 8月10日】 「LCP 2025 Season Finals」 注目の日本チーム直接対決はSHGに軍配!
- 『リーグ・オブ・レジェンド』のアジア太平洋リーグ「LCP 2025 Season Finals」のグループステージ フェーズ1が8月10日(日)に行われ、日本のFukuoka SoftBank HAWKS gaming(SHG)とDetonatioN Focus Me(DFM)の直接対決で、SHGが2-1でDFMを下した。グループステージ フェーズ1は、「Mid Season」の順位に応じて4チームずつ2つのグループに分けられ、上位グループと下位グループの勝敗数によってフェーズ2での有利不利が決まる。SHGとDFMはともに1勝1敗での直接対決で、勝った方がフェーズ2に有利な位置で挑める。1vs1はEvi vs Aria ピック順を決めるための1vs1はSHGのEvi選手とDFMのAria選手の対決。Evi選手はヴァルスでAria選手のイレリアを遠距離から攻め立てるも、Aria選手の攻め+タワーダメージで1キルを獲得。アイテムで強化したAria選手はアルティメットからまとわりつき、見事に勝利した。互いに一歩も譲らない好ゲーム ゲーム1はDFMがブルーサイドを選択。タワーや視界の有利を広げてアタカンを狙うSHGは、近づいてくるDFMを待ち受けて迎撃。ここからゴールド差と視界をさらに広げたSHGがまずは勝利した。ゲーム2はSHGがレッドサイドを選択。DFMはボット・トップともに相打ち覚悟で序盤にキルを奪うと、そのゴールド有利をさらに伸ばして1勝を取り返す。Bo3最後のゲーム3もDFMはブルーサイドを選択。DFMが有利で試合を進め、タワー、ゴールドともにDFM有利で迎えたアタカンファイトで、人数有利を取られたSHGがDFMを追い返しアタカンもリセット。ドラゴンをめぐる集団戦ではEvi選手のエンゲージから勝ち切り、そのままドラゴン&バロンを獲得。育ったMarble選手のカイ=サ、FATE選手のサイラスが止まらず、ゴールド差も逆転すると、じっくりひとつずつタワーを破壊していったSHGが勝利した。LCP 2025 Season Finals グループステージ フェーズ1 SHG vs DFM リザルト ゲーム1 SHG勝利バン&ピック試合結果ゲーム2 DFM勝利バン&ピック試合結果ゲーム3 SHG勝利バン&ピック試合結果最終結果グループステージ フェーズ2は8月15日(金)より この結果を受けてグループステージはフェーズ2に移行。再びグループを組み替えて、プレーオフ進出6チームを目指す。なお、下位2チームは「LCP 2026」への参戦をかけた入れ替え戦を行う。グループステージ フェーズ2は8月15日よりスタートする。© 2025 Riot Games, Inc. Used With Permission■関連SNSLoLEsports:https://lolesports.com/ja-JP/■配信URLTwitch:https://www.twitch.tv/riotgamesjpYouTube:https://www.youtube.com/LoLeSportsJP