日本国内のeスポーツ界における功績を表彰する年に一度の祭典「日本eスポーツアワード2024」が、2025年1月15日(水)パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された。
今年で第二回となる「日本eスポーツアワード」は、昨年とは趣向を凝らしたプログラムになっていて、より多くのファンが楽しめるイベントとなっていた。
なんといっても受賞者がレッドカーペットで入場する粋な演出は、多くのファンが出待ちするなど、昨年とは比べものにならないほどの盛り上がりを見せていた。



今年は一部の賞をのぞき、受賞者が事前に発表されていたこともあり、お目当ての受賞者をひと目見ようと朝早くから会場に駆けつけていたファンも多く見られた。

ストリーマー賞に続きVTuber賞、日本eスポーツアワード 流行語大賞2024といったカジュアルゲーマーに親和性の高い賞が追加されるなど、より幅広い層が楽しめる工夫が垣間見えた。また、まだ日本にeスポーツという言葉がなかった時代のゲーマーにもうれしい出来事があったのでそちらも紹介していこう。
多くの選手が受賞する中で、ひときわ目に止まったのが功労賞を受賞した梅原選手に、格闘ゲームプレーヤー賞、年間最優秀eスポーツプレーヤー賞を受賞したときど選手、eスポーツキャスター賞を受賞したアール氏だ。彼らは共に40代になる選手で、ゲームセンターで格闘ゲームブームとなっていた1990年代から活躍しているプレーヤーだ。



かつてのゲーセン世代を過ごしてきた人からすると、彼らがこうして日の目を見る時代がやってくるとは思ってもみなかっただろう。それはもちろん彼ら自身も感じていたはずだ。そんな心の内が受賞後のコメントにも現れていた。
同じゲーセン世代を過ごしてきた筆者にとって、彼らのスピーチはとても心に残った。筆者ももれなくゲーセン世代のプレーヤーで、ゲーセンでゲームをやっている=社会のはみ出し物のような扱いだったかつての時代を過ごしてきた。
ときど選手のいうように、eスポーツという言葉がなかった90年代、ゲームの競技シーンはこんなキラキラした世界ではなかったし、老若男女問わずゲーム好きが集まる小さなコミュニティーに過ぎなった。ただ、その小さなコミュニティーは老いも若きも男も女も関係ない、ゲームが強いやつがヒーローであり、素性なんて関係なくてゲームを通じて仲良くなれる。大げさに掲げなくても多様性なんてものはすでに存在していた暖かい界隈でもあった。
一方で、今では考えられないような荒んだこともあっただけに、自分たちのやってきたことが30年後にこんな世界になるなんて夢にも思っていなかった。そんな時代を歩んできた筆者も、プレゼンターとしてこのような輝かしい舞台に立てたことをうれしく思うと共に、こんなにも世間に認められるeスポーツの世界を作り出してくれた皆様に感謝を伝えたい。

ちょっと危うさもあったり、あの時代の遊び心が見え隠れしたりする彼らの今後の活躍にも注目していきたい。なお、各賞と受賞者の詳細は下記を参照してほしい。
ここからは、授賞式以外のブースのレポートもお届けしよう。第二回となるアワードで最も大きな変化は、ファンが選手やチームを直接現地で讃え、一緒に楽しめる場が用意されたことだろう。
会場となったパシフィコ横浜には各スポンサーの展示ブースが設けられ、eスポーツタイトルの試遊や、受賞者選手と直接ふれ合える「ミート&グリート」などが行われた。
アワードを現地観覧するには観覧チケット(1800円)が必要だったが、ファンとして単に授賞式を見るだけではやや高く感じられるものの、普段の試合の姿とは一味違う、正装に身を包んだ選手たちと直接会えるチャンスを設けることで、有料イベントとしての価値はしっかり生み出されていたように思う。

オフィシャルパートナーのソニー ブース「INZONEラウンジ/NURO 光ラウンジ」では、INZONEブランドのモニターやヘッドセットを使って各種ゲームを試遊できるブースを展開。受賞者であるときど選手やハイタニ氏らもブースを訪問し、ファンとさかんに交流していた。


「アワード」というと格式ばった雰囲気に感じられるが、式典を離れればそこはeスポーツイベントなどで見かける時のような気さくな雰囲気に。選手が普段から口にしているeスポーツコミュニティの大切さを感じさせた。

日本郵政のブースは、eスポーツというデジタルな世界観の中に、あえてアナログな段ボール製のポストと、受賞者に手書きのメッセージを届けられるブースを展開。担当者によれば、投函されたメッセージは確実に受賞者に届けてくれるとのことで、デジタルなeスポーツという世界に置かれた「郵便」というアナログなシステムが、かえってファンと選手の距離をつなぐエモさを感じさせてくれた。



食品スーパーのベルクブースでは、同じ埼玉県のチームとしてスポンサードしているFAV gamingとともに「バトルラウンジ」を実施。「SFL」に参戦中のBelc FAV gamingの選手らが、格ゲー初心者には優しく、猛者には手を抜かずに、まさに『スト6』から飛び出した「リアルバトルラウンジ」という印象だった。プライベートブランド「くらしにベルク」のエナジードリンク「BARK」と「ゲーマースペックタブレット」も特別価格で販売。
担当者によると、今回のプラチナスポンサーに関しては、「常に新しい分野に挑戦し続けたい」という社長の思いと考えから実現したもの。経営理念である「Better Life with Community」(地域社会の人々に より充実した生活を)をそのままeスポーツ分野にも広げると同時に、Z世代との接点を生み出すことにも一役買っているとのことだった。


それ以外に、日本eスポーツアワードオフィシャルブースでは、受賞したeスポーツチームや選手のオフィシャルグッズなどを販売。受賞者とのサイン会&撮影会の「ミート&グリート」は、他のどのイベントよりも気軽に、しかも人数も限定されて目当ての選手とふれ合える、かなりレアな機会となっていた。



第二回ということもあり、徹底してファンの来場体験を大切にしているように見えた今年の「日本eスポーツアワード 2024」。まだまだ知名度も低く、会場の様子も分からなかったためか、来場者は決して多くはなかったが、こうしたイベントが次回以降も続くとしたら、間違いなくファンにとっては来場するだけの価値がある式典だと筆者は思う。噂が広まる来年以降はしっかりスケジュールに入れておきたい。
一方でまだまだ課題が残る場面も見受けられた。ひとつは授賞式の時間。特にトラブルはなかったものの、閉演の予定が大幅に遅れていた。遠方から来た人にとっては帰りの時間でヒヤヒヤした人もいたのではないだろうか。
また、一部の賞をのぞき受賞者が事前に発表されていたことも賛否はある。やはり当日のワクワク感が薄れてしまい、どうしても答え合わせを見に来た感は否めない。「誰が受賞するんだろう」といったワクワク感は当日リアルタイムでもっと感じたいものだ。
もうひとつは厳かな式典ということもあり、いつ拍手をしていいのか分からないタイミングがあった。受賞者がステージに姿を見せた時に、来場者が拍手をしていいのか分からずシーンとした瞬間が度々見られ、受賞した選手もステージの真ん中でたたずんでしまい、スタッフに移動を促される場面も。やはり受賞した選手がステージに現れた時には、スタッフが拍手を促すなどして盛大な拍手で出迎えたいところ。選手にとっても気持ちのいい瞬間があってもいいのではないかとも感じた。
しかし回数を重ねることで入場者数は昨年の3倍、最大同時接続者数もおそらく4倍以上はあったであろう結果は、大きな前進とも言える。来年はさらなる演出を期待したい。
日本eスポーツアワード2024 レッドカーペットアーカイブ
日本eスポーツアワード2024アーカイブ
撮影:宮下英之/いのかわゆう
編集:いのかわゆう
今年で第二回となる「日本eスポーツアワード」は、昨年とは趣向を凝らしたプログラムになっていて、より多くのファンが楽しめるイベントとなっていた。
なんといっても受賞者がレッドカーペットで入場する粋な演出は、多くのファンが出待ちするなど、昨年とは比べものにならないほどの盛り上がりを見せていた。

▲TOYOTAの高級車に乗って会場に姿を見せる受賞者。受賞者にとってもファンにとってもワンランク上の式典だということが感じられる演出だ

▲前回三冠を達成した“あcola”選手。ファンサービスもお手の物

▲レッドカーペットの先ではMC陣によるインタビューが実施されていた。受賞者をカメラでとらえようと多くのファンがスマホを掲げていたのが印象的
今年は一部の賞をのぞき、受賞者が事前に発表されていたこともあり、お目当ての受賞者をひと目見ようと朝早くから会場に駆けつけていたファンも多く見られた。

▲開演前から長蛇の列。こちらも昨年とは大きくことなる光景だ
ストリーマー賞に続きVTuber賞、日本eスポーツアワード 流行語大賞2024といったカジュアルゲーマーに親和性の高い賞が追加されるなど、より幅広い層が楽しめる工夫が垣間見えた。また、まだ日本にeスポーツという言葉がなかった時代のゲーマーにもうれしい出来事があったのでそちらも紹介していこう。
かつての自分と今の自分を照らし合わせるゲーセン世代の躍進
多くの選手が受賞する中で、ひときわ目に止まったのが功労賞を受賞した梅原選手に、格闘ゲームプレーヤー賞、年間最優秀eスポーツプレーヤー賞を受賞したときど選手、eスポーツキャスター賞を受賞したアール氏だ。彼らは共に40代になる選手で、ゲームセンターで格闘ゲームブームとなっていた1990年代から活躍しているプレーヤーだ。

▲功労賞を受賞した梅原選手は1981年生まれの43歳(出典:日本eスポーツアワード2024 ©︎JAPAN eSPORTS AWARDS)

▲格闘ゲームプレーヤー賞、年間最優秀eスポーツプレーヤー賞を受賞したときど選手は1985年生まれで今年40歳の大台に乗る(出典:日本eスポーツアワード2024 ©︎JAPAN eSPORTS AWARDS)

▲eスポーツキャスター賞を受賞したアール(野田龍太郎)氏は1979年生まれで45歳(出典:日本eスポーツアワード2024 ©︎JAPAN eSPORTS AWARDS)
かつてのゲーセン世代を過ごしてきた人からすると、彼らがこうして日の目を見る時代がやってくるとは思ってもみなかっただろう。それはもちろん彼ら自身も感じていたはずだ。そんな心の内が受賞後のコメントにも現れていた。
梅原:すいません。スーツ着ると緊張しますね。全然普段大勢な場で喋るの平気なんですけど(笑)。
直前に喋るだけいけないって言われて、全然喋ることもいつかないんですけど。功労賞……ありがたいんですけど、もっと早くもらってもよかったのかなっていうか、随分時間かかったんだなって思います。
まわりから何を言われてもゲーム好きだからやって、それが時間をかけて評価されたってことだと思うんですけど、まあゲームに限らず、自分がこうだって思うことをやってると評価されるまでには時間かかるってことなんでしょうね。
俺はこれが正しいと思ってたし、何を言われてもそれを曲げなかった——。10歳とか11歳ぐらいから始めて、30年かかってようやく「ありがとうございます」って言われた気分なんで。
皆さんも何か好きなこととかあるんだったら30年後くらいに評価されるつもりでやったらいいんじゃないかなと思います。ありがとうございました。
ときど(格闘ゲームプレーヤー賞を受賞して):個人賞、格闘ゲーム部門という栄えある賞をいただきまして本当に光栄なことだと思います。
これも本当に普段からご支援いただいているファンの皆様のおかげですので、改めて本当にお礼を言わせていただきます。ありがとうございました。
正直な話、今年はこのYogibo REJECTというチームをどうやって強くするか、チームの強化に向けた1年だったので、個人の成績はそんなに意識していませんでした。その強いチームを目指すにあたって、本当に高い熱量のチームメートに支えられたりだとか、サポートしてくれる、REJECTの皆様のおかげで、僕自身もプレーヤーとしてすごい成長することができて、そこも本当にうれしい一年でした。
また来年も、日本eスポーツアワードが開催されると思うので、来年は功労賞と個人賞の二冠を目指し、これに満足することなくがんばりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
ときど(年間最優秀eスポーツプレーヤー賞を受賞して):この瞬間まで選んでいただけると伝えられていなかったので、何も準備できていませんが、率直な思いの丈を話させていただきます。
まず、全体を通したMVPに選んでいただけたことは非常に光栄なことで、ファンのみなさんの支援のおかげでいただけたので、本当にありがとうございます。
抽象的な話になりますが、今年40歳になるということもあって、「eスポーツ」という言葉ができるはるか前からゲームセンターでゲームをやらせていただいて、こんな眩しい世界ではなかったんですよ、25年くらい前。
この歳になって、そういう辛い時代というか、輝かしいところではない厳しい時代でずっとプレーしていた僕らの先輩、やめざるを得なかった方々が、すごい熱量で自分の好きな趣味に取り組んでいて、そういった方々がいてくださったおかげで、栄えある賞をいただけたということは、そういう時代を知る人もあまり多くなくなってきたと思うので、そういった方々にもありがとう、と。
僕がまだまだ引っ張っていって、みなさんのあの時の思いは伝えていきますので、引き続き、これからもよろしくお願いいたします。
アール:自分は、eスポーツやeスポーツキャスターという言葉がない時代から、いろんな形で(eスポーツの)実況を解説したり、話をしたりという活動をさせていただきました。
このような素晴らしい舞台の上で、自分がこうした賞をいただけるというのは、自分だけの力ではなくて、2023年に発売された『ストリートファイター6』が、非常に大きな反響を呼んで、多くの方に自分のことを知っていただけたというところが大きいと思っています。
それだけに非常に個人的な思いではありますが、黎明期から苦楽を共にした、ハメコ。という相棒と一緒に取りたい賞だったなと思っております。そしてその『ストリートファイター6』が世間に大きな影響を与えて、その架け橋となり、今はもうこの世を去ったなないという若いキャスターがおりまして——。もしかしたら、そいつがもらうべき賞だったのかもしれないと、自分は思っています。
『ストリートファイター6』引いては格闘ゲーム業界というものが、世の中の人に面白いものだということがたくさん伝わって、こちらの賞をいただいているのだと思っています。
自分はキャスターの中では、かなりのベテランですが、個人的にキャスターというのは、形を持たなくていいと思っています。
キャスターといえばフォーマルだよねとか、キャスターといえばネクタイは必要だよねとか——。そういった未来は、ちょっとつまらないんじゃないかなと思っています。だからこそ、ベテランであり最年長である自分が、率先して大人気ない前例をたくさん作って、この先たくさん出てくるであろう若いキャスターが、その個性や才能を伸び伸びと発揮できる未来を作るために、今後も大人気ないことをたくさんやっていきたいなと思っています。
そして「日本eスポーツアワード」のeスポーツキャスター賞が、若いキャスターたちの目指すべきところになるといいなと思って、この業界を代表して受け取らせていただきたいと思っております。本当にありがとうございます。
同じゲーセン世代を過ごしてきた筆者にとって、彼らのスピーチはとても心に残った。筆者ももれなくゲーセン世代のプレーヤーで、ゲーセンでゲームをやっている=社会のはみ出し物のような扱いだったかつての時代を過ごしてきた。
ときど選手のいうように、eスポーツという言葉がなかった90年代、ゲームの競技シーンはこんなキラキラした世界ではなかったし、老若男女問わずゲーム好きが集まる小さなコミュニティーに過ぎなった。ただ、その小さなコミュニティーは老いも若きも男も女も関係ない、ゲームが強いやつがヒーローであり、素性なんて関係なくてゲームを通じて仲良くなれる。大げさに掲げなくても多様性なんてものはすでに存在していた暖かい界隈でもあった。
一方で、今では考えられないような荒んだこともあっただけに、自分たちのやってきたことが30年後にこんな世界になるなんて夢にも思っていなかった。そんな時代を歩んできた筆者も、プレゼンターとしてこのような輝かしい舞台に立てたことをうれしく思うと共に、こんなにも世間に認められるeスポーツの世界を作り出してくれた皆様に感謝を伝えたい。

▲本メディア「eSports World」は審査員に任命され、筆者はプレゼンターとしてeスポーツチーム賞を受賞した3チームのオーナーにトロフィーを授与することができた(出典:日本eスポーツアワード2024 ©︎JAPAN eSPORTS AWARDS)
ちょっと危うさもあったり、あの時代の遊び心が見え隠れしたりする彼らの今後の活躍にも注目していきたい。なお、各賞と受賞者の詳細は下記を参照してほしい。
カテゴリ | 賞名 | 受賞者 |
---|---|---|
eスポーツプレーヤー部門 | 年間最優秀eスポーツプレーヤー賞 | ときど |
MOBAプレーヤー賞 | Evi、TON・GG | |
シューティングゲームプレーヤー賞 | ゆきお、Laz、Meiy、suzu | |
格闘ゲームプレーヤー賞 | カワノ、ときど、ミーヤー、double | |
マインドゲームプレーヤー賞 | たすく、title | |
スポーツゲームプレーヤー賞 | Mayageka | |
eモータースポーツゲームプレーヤー賞 | 岡田 衛、TakuAn | |
ノンセクションゲームプレーヤー賞 | AKa、alf、KKM* | |
U18スポーツプレーヤー賞 | あcola、ま・しお、absol | |
ライブエンターテイメント部門 | ストリーマー賞 | ドンピシャ、ハイタニ、k4sen、SHAKA |
eスポーツキャスター賞 | アール、平岩康佑、OooDa | |
VTuber賞 | 天鬼ぷるる、獅白ぼたん、渋谷ハル、橘ひなの、柊ツルギ | |
ベストバウト賞 | VALORANT Radiant Asia Invitational DetonatioN FocusMe VS EDG VALORANT Challengers Japan 2024 Split 2 RIDDLE VS FENNEL ストリートファイターリーグ Division S 第9節 Saishunkan Sol 熊本 ウメハラ VS 忍ism Gaming ヤマグチ | |
eスポーツオーガナイザー部門 | eスポーツゲーム賞 | Overwatch 2、STREET FIGHTER 6、VALORANT |
eスポーツ大会賞 | ストリートファイターリーグ、IdentityⅤ Japan League、Overwatch Champions Series Japan、VALORANT Challengers Japan | |
eスポーツチーム賞 | FENNEL、REJECT、ZETA DIVISION | |
その他 | 審査員特別賞 | 宮園拓真、Rangchu、ReijiOcO |
eスポーツ功労賞 | 犬飼博士、梅原大吾、スイニャン | |
日本eスポーツアワード 流行語大賞2024 | 「ガイル村」 |
選手との交流やスポンサーブースなど、オフラインならでのスペシャルコンテンツも
ここからは、授賞式以外のブースのレポートもお届けしよう。第二回となるアワードで最も大きな変化は、ファンが選手やチームを直接現地で讃え、一緒に楽しめる場が用意されたことだろう。
会場となったパシフィコ横浜には各スポンサーの展示ブースが設けられ、eスポーツタイトルの試遊や、受賞者選手と直接ふれ合える「ミート&グリート」などが行われた。
アワードを現地観覧するには観覧チケット(1800円)が必要だったが、ファンとして単に授賞式を見るだけではやや高く感じられるものの、普段の試合の姿とは一味違う、正装に身を包んだ選手たちと直接会えるチャンスを設けることで、有料イベントとしての価値はしっかり生み出されていたように思う。

▲憧れの選手と1on1でコミュニケーションが取れるのはミート&グリートならでは。そんな貴重な体験が楽しめるのはうれしいポイントだ(出典:日本eスポーツアワード2024 ©︎JAPAN eSPORTS AWARDS)
オフィシャルパートナーのソニー ブース「INZONEラウンジ/NURO 光ラウンジ」では、INZONEブランドのモニターやヘッドセットを使って各種ゲームを試遊できるブースを展開。受賞者であるときど選手やハイタニ氏らもブースを訪問し、ファンとさかんに交流していた。

▲ユニフォームに身を包み対戦を楽しむときど選手

▲ハイタニ氏との撮影会が始まると自然に長蛇の列ができる
「アワード」というと格式ばった雰囲気に感じられるが、式典を離れればそこはeスポーツイベントなどで見かける時のような気さくな雰囲気に。選手が普段から口にしているeスポーツコミュニティの大切さを感じさせた。

▲多彩なゲームでINZONEブランドのモニターやヘッドセットを試せるブースも
日本郵政のブースは、eスポーツというデジタルな世界観の中に、あえてアナログな段ボール製のポストと、受賞者に手書きのメッセージを届けられるブースを展開。担当者によれば、投函されたメッセージは確実に受賞者に届けてくれるとのことで、デジタルなeスポーツという世界に置かれた「郵便」というアナログなシステムが、かえってファンと選手の距離をつなぐエモさを感じさせてくれた。

▲イベントでも、手書きのメッセージを本人に届けられる機会はなかなかない。日本郵政の粋な計らいだ

▲今回のブースは、今年からInstagramで始まった日本郵政による新価値創造プロジェクト「#NEXTJP」の具体的な取り組みのひとつとも言える(https://www.instagram.com/nextjp_action/)

▲メッセージはもちろんポストへ。段ボールによるSDGsなポストでメッセージを確実に届けてくれる
食品スーパーのベルクブースでは、同じ埼玉県のチームとしてスポンサードしているFAV gamingとともに「バトルラウンジ」を実施。「SFL」に参戦中のBelc FAV gamingの選手らが、格ゲー初心者には優しく、猛者には手を抜かずに、まさに『スト6』から飛び出した「リアルバトルラウンジ」という印象だった。プライベートブランド「くらしにベルク」のエナジードリンク「BARK」と「ゲーマースペックタブレット」も特別価格で販売。
担当者によると、今回のプラチナスポンサーに関しては、「常に新しい分野に挑戦し続けたい」という社長の思いと考えから実現したもの。経営理念である「Better Life with Community」(地域社会の人々に より充実した生活を)をそのままeスポーツ分野にも広げると同時に、Z世代との接点を生み出すことにも一役買っているとのことだった。

▲操作方法から優しく教えるsako選手

▲一時は品切れが続出したというエナジードリンクとタブレット。特にタブレットは炭酸が含まれ、かなり強烈な刺激がクセになる
それ以外に、日本eスポーツアワードオフィシャルブースでは、受賞したeスポーツチームや選手のオフィシャルグッズなどを販売。受賞者とのサイン会&撮影会の「ミート&グリート」は、他のどのイベントよりも気軽に、しかも人数も限定されて目当ての選手とふれ合える、かなりレアな機会となっていた。

▲日本eスポーツアワードオフィシャルブース

▲物販ブースには各チームのウェアやオリジナルグッズを販売

▲14時30分〜16時30分のみの「ミート&グリート」には常に長蛇の列が。1回あたりの時間も長めで、かなり充実したミーグリだった
来年の現地コンテンツにはファンが殺到するかも……?
第二回ということもあり、徹底してファンの来場体験を大切にしているように見えた今年の「日本eスポーツアワード 2024」。まだまだ知名度も低く、会場の様子も分からなかったためか、来場者は決して多くはなかったが、こうしたイベントが次回以降も続くとしたら、間違いなくファンにとっては来場するだけの価値がある式典だと筆者は思う。噂が広まる来年以降はしっかりスケジュールに入れておきたい。
一方でまだまだ課題が残る場面も見受けられた。ひとつは授賞式の時間。特にトラブルはなかったものの、閉演の予定が大幅に遅れていた。遠方から来た人にとっては帰りの時間でヒヤヒヤした人もいたのではないだろうか。
また、一部の賞をのぞき受賞者が事前に発表されていたことも賛否はある。やはり当日のワクワク感が薄れてしまい、どうしても答え合わせを見に来た感は否めない。「誰が受賞するんだろう」といったワクワク感は当日リアルタイムでもっと感じたいものだ。
もうひとつは厳かな式典ということもあり、いつ拍手をしていいのか分からないタイミングがあった。受賞者がステージに姿を見せた時に、来場者が拍手をしていいのか分からずシーンとした瞬間が度々見られ、受賞した選手もステージの真ん中でたたずんでしまい、スタッフに移動を促される場面も。やはり受賞した選手がステージに現れた時には、スタッフが拍手を促すなどして盛大な拍手で出迎えたいところ。選手にとっても気持ちのいい瞬間があってもいいのではないかとも感じた。
しかし回数を重ねることで入場者数は昨年の3倍、最大同時接続者数もおそらく4倍以上はあったであろう結果は、大きな前進とも言える。来年はさらなる演出を期待したい。
日本eスポーツアワード2024 レッドカーペットアーカイブ
日本eスポーツアワード2024アーカイブ
「日本eスポーツアワード」 開催概要
主催:一般社団法人日本eスポーツ連合
共催:横浜市
運営:日本eスポーツアワード実行委員会
実施会場:パシフィコ横浜 国立大ホール
開催日程:2025年1月15日(水)
特設サイト:https://esportsawards.jp/
主催:一般社団法人日本eスポーツ連合
共催:横浜市
運営:日本eスポーツアワード実行委員会
実施会場:パシフィコ横浜 国立大ホール
開催日程:2025年1月15日(水)
特設サイト:https://esportsawards.jp/
撮影:宮下英之/いのかわゆう
編集:いのかわゆう
【井ノ川結希(いのかわゆう)プロフィール】
ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。最近はまっているゲームは『VALORANT』。
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- 【結果速報 9月15日】Ultimate Fighting Arena 2025 スト6部門優勝はさはら! ——kingsvegaとの日本人対決を制す
- 2025年9月12日(金)〜14日(日)(現地時間)に格闘ゲームのeスポーツ大会「Ultimate Fighting Arena 2025(UFA 2025)」がフランス・パリで開催された。『ストリートファイター6(スト6)』部門は、年間王者を決める世界大会「CAPCOM CUP 12」のポイントが獲得できる「カプコンプロツアー 2025(CPT 2025)」のプレミア大会に位置づけられている。TOP 48はまさに世界中のトッププレーヤーが集結したドリームマッチ。その中で、地元欧州のプレーヤーの活躍も光った。日本勢は、13位にひぐち、17位にりゅうせい、小路KOGらが入った。Ultimate Fighting Arena 2025とはUltimate Fighting Arenaは、格闘ゲームに特化したヨーロッパ最大のフェスティバル。トッププレイヤー、ファンらが集結し、8つのトーナメントと、6つのコミュニティイベント、2つのアーケードイベントを実施。さらに会場では自分のPCなどを持ち寄ってオフラインで遊ぶ「BYOC」も実施される。 Ultimate Fighting Arena 2025 結果 TOP 8はこれまでのプレミア大会とはやや傾向が異なり、各国の実力派プレーヤーの中でも、今季上位に上ってこなかった顔ぶれが目立った。ウイナーズ側は日本のkingsvega、さはら、カナダのRiddles、北米のNephewの4名が名を連ね、ウイナーズファイナルでは日本人対決をさはらが勝利する。一方、ルーザーズ側はスウェーデンのJuicyjoe、チリのBlaz、北米のNoahTheProdigy、英国のbroskiが残ったが、ウイナーズから降りてきたNephewとRiddlesを下したBlazがルーザーズファイナルへ。しかしkingsvegaがBlazを下し、グランドファイナルは再び日本人対決となる。一度は敗れているkingsvegaにとっては厳しい再戦だが、それ以上にさはらの覚醒は止まらなかった。機動力と意外な動きが持ち味のブランカながら、無敵技、投げ、ドライブラッシュなどあらゆる技がさはらのEDに届かない。kingsvegaもタイムアウトを取ってリズムを変え、1ラウンドを奪ったものの、この日のさはらを止めることはできず、3-0のストレートでさはらが優勝を決めた。▲読み合いの結果とはいえ、ここは食らうだろうというODローリングをガードし、投げへのシミー、対空が出ない場面でのジャストパリィなど、❝覚醒❞したさはらのED。終わってみれば最終ラウンドはパーフェクトとまさに完璧な勝利だった さはらは優勝インタビューで、「この大会は僕の集大成だと思っていました。前回悔しいところで終わったので勝ててうれしいです」とコメント。満面の笑みで❝さはらコール❞に応えた。順位所属チーム|選手名1 さはら 2 kingsvega(きんぐすべが) 3 2Game |Blaz(ぶらず) 4 Riddles(りどるず) 5 NoahTheProdigy(のあざぷろでぃぎー) 5 Team Liquid|Nephew(ねふゅー) 7 |Juicyjoe(じゅーしーじょー) 7 Team Liquid|broski(ぶろすきー) これでさはらは「CAPCOM CUP 12」の出場権を獲得。「SFL World Championship 2025」ですでに「CAPCOM CUP 12」の出場権を持っている現メンバーとともに、Good 8 Squadのメンバー全員が出場することが決まった。また、「CAPCOM PRO TOUR 2025」のポイントは、優勝者を除き2位以下に順次与えられるため、2位にBlaz、今大会で準優勝を獲得したkingsvegaが6位に急浮上。8位でも310点と上位争いがさらに過酷さを増している。配信URL ■Day1 日本時間 9月13日(土)YouTube:https://youtube.com/live/CuMgUh1KQ9sTwitch:https://www.twitch.tv/capcomfighters_jp■Day2 日本時間 9月14日(土)YouTube:https://youtube.com/live/ESmy9rhc4QUTwitch:https://www.twitch.tv/capcomfighters_jp■Day3 日本時間 9月15日(月・祝)YouTube:https://youtube.com/live/IlW-0e8-jsITwitch:https://www.twitch.tv/capcomfighters_jp■関連リンクstart.gg:https://www.start.gg/tournament/ultimate-fighting-arena-2025-3/details© CAPCOM
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- 【現地レポート+インタビュー】東京で2回目のVCTが開催! 日本チーム不在でもスーパープレー連発で大熱狂——VCT Pacific Stage 2 Finals Tokyo
- 『VALORANT』の国際リーグである「VCT Pacific Stage 2」の準決勝・決勝戦が、8月30日(土)~31日(日)にアリーナ東京ベイにて開催された。プレーオフで勝ち進んだ上位3チームが、この日本に集結し、トップレベルの白熱した戦いを繰り広げた。▲試合会場は千葉県船橋市の「LaLa arena TOKYO-BAY」。最高気温は37℃の猛暑日の中、たくさんのVALORANTファンが押し寄せた Day 1に行われた準決勝(Lower Final)では、🇭🇰TALON(🇭🇰TLN)対🇮🇩Rex Regum Qeon(🇮🇩RRQ)が対決。Day 2の決勝戦(Gran Final)では、準決勝戦の勝者を🇸🇬Paper Rex(🇸🇬PRX)が待ち構える。▲Day 1にはプロ・ストリーマー混合チームのショーマッチ、Day 2にはラッパー・千葉雄喜によるライブパフォーマンスが実施 今大会の準優勝以上の結果を収めたチームは、9月~10月にかけてフランス・パリで開催される世界大会「VALORANT Champions 2025」への出場権を獲得することができる。Pacific全体では4枠あるうち、2枠が決定する重要な試合である。日本チームは不在——だが海外チーム相手にも熱い声援 VCTが日本で開催されるのは、2023年のMasters Tokyo以来。残念ながら、日本代表のZETA DIVISIONはグループステージ敗退、DetonatioN FocusMeはプレーオフ初戦敗退という結果に終わっており、またもや日本チーム不在のまま開催されることとなった。▲中央にある円形のステージを、ぐるりと囲むように観客席が設けられている。縦に広がるような構造のおかげで、選手との距離はかなり近く感じた(叫び声が席からでも聞こえるほど) ▲さまざまなチームグッズを身にまとうファンの姿が多く見られた。このような国際大会は、海外チームを目にすることのできる貴重な機会だ とはいえ、会場の熱い声援は、日本チーム不在ということを感じさせないレベルであったことは間違いない。現場にいる海外メディアの記者も、自国のチームがいない中でもこれだけ盛り上がるということに驚いているようだった。▲おなじみの応援ボード。配信カメラで頻繁に映されるせいか、クスッと笑えるインパクト大なものも多かった ▲前列の一部席の観客は、花道に入って選手たちと生で交流することができる! ファンにはたまらない最高の瞬間だ Pacific王者を決める激戦 さて、決勝戦の様子もレポートしていこう。準決勝で勝利を決めたのは、🇮🇩RRQであった。🇭🇰TLNに先制2マップを取得されるも、その後は持ち直して2マップを逆に連取。5マップ目に突入したが、オーバータイムにまでもつれ込む激戦の末に、🇮🇩RRQが白星を獲得した。▲序盤は🇭🇰TLNにペースを持っていかれた🇮🇩RRQ。だが後半になるにつれ本調子を取り戻し、最終マップでは持ち前の粘り強さを見せ、見事に勝利を決めた(https://www.youtube.com/live/hKa_O9nb1QI?si=jcOZObDlW11KJUWy&t=25268) 翌日の決勝戦では、初代Pacificリーグの王者である🇸🇬PRXが立ち向かった。両チームともビザの問題により欠員が危ぶまれたものの、すべてのメンバーが無事に来日することができた。▲Masters Tokyoではビザの関係で出場できなかったsomething(スミス)選手が無事に到着 試合は終始🇸🇬PRXの独壇場であったといっても過言ではない。開幕から2マップを連取し、早々に王手をかける🇸🇬PRX。特に第2マップの「アセント」では、開幕から10ラウンドを練習し、早々に12-1でマッチポイントへ。🇮🇩RRQも攻守交代後に必死に抵抗するが、さすがに11ラウンド差からの勝利は絶望的であった。▲試合開始直後から魅せる、d4v4i選手の1on2クラッチ。勢いに乗っているはずの🇮🇩RRQに、真正面からフィジカルで叩きのめす(https://www.youtube.com/live/gj5aNowpeCA?si=gwEhehFNQj7U8pk6&t=7835) 🇮🇩RRQは第3マップをなんとか返すものの、その後の第4マップでも依然として🇸🇬PRX優位の状況が続いた。▲おなじみの大胆かつ攻撃的な動きで、ひとりずつ敵を殲滅。🇸🇬PRXはこのラウンドを獲得し、マッチポイントへ(https://www.youtube.com/live/gj5aNowpeCA?si=5g1o1jxN9ePp9pP4&t=15937) ▲12-7で迎える第20ラウンド、マッチポイントの🇸🇬PRXは勝ち切るためにタイムアウトを取得した ▲1on1にまで持ちこんだ🇮🇩RRQだったが、見事勝利したのは🇸🇬PRX。二度目となるPacific王者に輝いた(https://www.youtube.com/live/gj5aNowpeCA?si=NYEZZkP9KDZ6YnY1&t=16343) ▲トロフィーをかかげる選手たち。まさに王者にふさわしい、圧倒的な戦いであったことは間違いない! まるでライブ会場——進化した最新鋭の会場演出 やはり特筆すべきは、会場演出の迫力だ。写真だけでも「美しさ」が伝わってくると思うが、やはり照明や音楽も含めたさまざまな演出が絡み合い、試合をより興奮させるような工夫がされている。▲試合開始前には音楽が流れ、観客席からは手拍子が。まるでライブ会場のように、観客をさらに熱狂させる演出が随所に散りばめられていた ▲タイムアウト中やスーパープレーの後には、このような特殊な照明効果が現れる。特に上階から観ると、かなり幻想的な演出が体験できた さらに決勝戦では、全観客に対してリストバンド型ライトが配布され、会場の雰囲気をより賑やかなものにしていた。このデバイスはただ光るものではなく、試合の展開ごとに自動的に色が変わる。▲座席に貼られる形で用意されたライトは、試合後にそのまま持ち帰ることができる。試合中は自動的に点灯・消灯するが、家に持ち帰った後は普通に使用できるようになる(側面のボタンを押すとさまざまな色で点灯する) ▲🇸🇬PRXが優勝すると、リストバンドはチームカラーのピンク色に! ▲観客席に現れる「PRX」の文字。座席単位で色をコントロールできる最新技術が使われている(https://www.youtube.com/live/gj5aNowpeCA?si=Sc3Nl3-0WDXHCHz3&t=16397) 会場の外でも楽しめる!オフライン大会ならではの催しも 試合会場の外には、さまざまなブースが用意されていた。試合以外にも、飽きさせないためのさまざまなコンテンツが目白押しだ。▲画面をタッチするとカウントダウンが始まり、パシャリと撮影。友達と一緒にイベントに来た思い出を残そう! ▲写真はその場で印刷されて、実際にもらうことができるぞ! ペンも用意されているので、プリクラのように落書きをするのもオススメ ▲VCT Pacific限定のグッズを求め、ブースには長蛇の列。人気の商品は、試合開幕前には既に売り切れになっていたほどだ ▲巨大ウィングマンをバックに、ちびウィングマンとツーショット ▲スパイクと箱で記念撮影。普通に解除してもよし、箱の後ろに隠れて解除するもよし ▲インテルブースでは「BOT撃ち」を行うことのできるコーナーが用意されていた。好成績を収めれば、先着順に限定グッズが手に入る。なかなか成功者が現れなかったものの、4回以上挑戦してクリアした猛者もいたのだとか ▲インテルのブースでは他にも、抽選会のようなものも実施されていた。なんらかの限定グッズが当たるらしい ▲TenZのサイン付きマウス(1等)を当てた豪運の持ち主! 個人的なイチオシは、やはりレッドブルブースの「チェキ」が撮影できるコーナー。イベントの思い出にと、形に残るものが手に入るのはうれしい。🇸🇬PRX優勝インタビュー 最後に、メディア合同で行われた🇸🇬PRXの優勝後インタビューの内容をお届けしよう。▲左からPatMen(ぱっとめん)、f0rsakeN(ふぉーせいくん)、something(すみす)、Jinggg(じん)、d4v4i(だばい)、alecks(あれっくす)コーチ ——まずは選手とコーチの皆様から、ひと言ずつメッセージをお願いします。PatMen:厳しい試合だったし、昨日と今日で2日連続で対戦している🇮🇩RRQの方が、いい流れだったかもしれません。しかし、自分たちがお互いを信頼し合い、止まることなく強い気持ちでプレーしたことが、勝つことのできた要因であると思います。f0rsakeN:最初の2マップまでは、自分たちのプレーがしっかりできたと思います。ただ第3マップからは、自分たちのミスもあり、相手に流れが移ってしまった印象がありました。その後の第4マップでは、自分たちの流れを取り戻すことができ、自分たちのプレーができたと思います。Jinggg:プレーについては同じ思いで、今日は勝てて本当にうれしいです。前回の🇮🇩RRQ戦では負けてしまったのですが、今回はリベンジを果たすことができました。d4v4i:チーム全員のプレーを誇りに思います。ひとりひとり素晴らしいパフォーマンスを出せて、プレースタイルだけでなくメンタル面においても自分たちの強さを発揮できたと思います。(🇮🇩RRQに)リベンジができてとてもうれしいです。今回は全員が日本に来られて良かったです。特にイリア(something選手の本名)にとってはかつてプレーしていた場所でもあるので、残りの時間で日本を楽しみたいと思います。something:今までを振り返って、何よりも重要だったのは「Esports World Cup」や「VCT Masters Toronto」などで大変なことがありながらも、その後の「VCT Pacific Stage 2」では力強くスタートを切れたことだと思います。🇮🇩RRQや🇰🇷Gen.Gのように、自分たちを研究して戦ってくるチームもあり、苦戦を強いられることも覚悟していました。それでもプレーオフ前に負けたのは🇯🇵ZETA戦だけで、ステージ全体を通して3マップしか落としておらず、今シーズン全体を見ればとてもいい結果だったと思います。そして、日本は僕にとっては第二のホームのような場所です。自分のキャリアが始まった地でもありますので、この日本に戻ってこれたということを大変うれしく思います。alecksコーチ:この「ボーイズ」たちを誇りに思います。長いシーズンでしたが、全員でここまで頑張ってきました。何よりもうれしいのは、日本でこれだけたくさんの人たちの前でプレーができたことです。声援を聞くのも最高で、みんなが集中して試合を見てくれていることがとてもうれしかったです。また、イリア(something選手)を連れて来ることができたのも良かったと思います。2023年の「Masters Tokyo」では、MVPに選ばれてもおかしくないパフォーマンスであったにも関わらず、日本に連れてくることができませんでした。なので、今回は全員がそろって日本に来られて良かったです。あとは……MVPの人にディナーをおごってもらいたいですね(笑)。▲MVPに選ばれたのはsomething選手。圧倒的なパフォーマンスを考えれば、納得せざるを得ないチョイスだ ——PatMen選手に質問です。日本に来て楽しかった思い出や、美味しかった食べ物はありますか?PatMen:まず第一に、親切な人ばかりだと思いました。日本は満喫できているのですが、ただ今は試合続きで外に出られていません。さっきd4v4iが話をしていた「一蘭」に行ってみたいです(笑)——今日の🇮🇩RRQ戦に点数をつけるなら、何点くらいだと思いますか?alecksコーチ:ロータス(第3マップ)は2点、それ以外は9点をあげてもいいと思います。2点の理由は、自分たちが何もできなかったこと。そして、自分たちの作戦や連携も含めて、思うようにプレーができなかったためです。——トロフィーの上にいる「Bok」君は勝利にどのくらい貢献しましたか?alecksコーチ:ずっとコーチングブースにいたので、10%くらいですね(笑)▲トロフィーの上に鎮座するのは、🇸🇬PRXのマスコットキャラクターである「Bok」。チームの勝利にはあまり貢献できてはいないようだ ——今回の試合において、マッププールについての有利はありましたか?alecksコーチ:やはりマップアドバンテージは大きかったです。特に🇮🇩RRQの「アイスボックス」は世界でも有数の強さを誇りますが、今回マッププールから外れていたのは幸運でした。——something選手がMVPを取った理由はなんだと思いますか?alecksコーチ:「Masters Toronto」から戻ってきてからは、彼は生まれ変わったかのように強い選手になりました。恐れを知らず、キルを取りまくり、ヨル使いの中では右に出るものはいないと言っても過言ではありません。だからこそ、MVPに選ばれたのだと思います。——d4v4i選手とJinggg選手にお聞きします。2年前にも日本で戦った経験があると思いますが、当時と今回とでプレーの感覚の違いなどはありましたか?d4v4i:今のチームは、以前よりもお互いにより正直にいられるようになったと思っています。もちろん前から親しい仲ではあったのですが、今回のほうがよりオープンに接することができていると思います。特に今シーズンは、よりチームでの関係性を育むことができたので、パフォーマンスやメンタル面においてもいい効果をもたらしていると感じます。d4v4i:(Jinggg選手にマイクを向けながら)答える?Jinggg:いや大丈夫。d4v4i:残念(笑)。▲記者会見中にも、仲が良さそうに雑談するJingggとd4v4i ——今年パリで開催される「VALORANT Champions 2025」には、🇰🇷T1と🇰🇷DRXも出場します。この2チームについてはどう思いますか?alecksコーチ:今年は🇰🇷DRXと🇰🇷T1の両方に1回ずつ負けましたが、こちらも逆に1、2回……もしかすると3回ほど勝っています。どのチームも強い相手で、特に🇰🇷DRXはプレーオフの後に調整する時間もあるので、戦い方を変えてきて、新バージョンの🇰🇷DRXを見せてくるかもしれません。🇰🇷T1についても、ここは非常に用意周到なチームであり、次のビッグイベントに向けて着々と準備を進めていると思います。強敵であることには間違いないので、こちらも作戦をよく練って、かなり準備しなければいけません。自分たちが勝つとは思いますが、とても大変な道であるとは思います。まとめ 2年前の「Masters Tokyo」を思い出させるほど、爆発的な声援の熱量が印象的な大会であったことは間違いない。選手たちとの距離の近さに、すさまじいスーパープレーの連発。そして、それらをドラマティックに盛り上げる会場演出の美しさ。ぜひ現地で観戦した人は、この感動を胸に刻みつけていただきたいところだ。ただやはり一点。今大会でも日本チームが不在であったという点は、非常に残念でならない。とはいえ2年前の「Masters Tokyo」の頃とは比べ、日本チームのレベルは非常に上がっていることは間違いない。🇯🇵DetonatioN FocusMe(🇯🇵DFM)は、かつての連敗を忘れさせるかのような快進撃を見せ、プレーオフ進出という快挙を成し遂げた。🇯🇵ZETA DIVISIONもプレーオフ進出こそ逃したものの、グループステージでは🇸🇬PRX相手にストレート勝利を収めるなど、決して他チームと比べて劣っているわけではない。▲第2マップ開始前に登場した🇯🇵DFMの選手たち(当時)。悔しい思いは幾度となく味わっただろうが、この1年は決して悪いものではなかっただろう(https://www.youtube.com/live/gj5aNowpeCA?si=YnojHUuv0jDUBvBh&t=7698) ようやく「リーグ」というシステムにも慣れてきた中で、日本チームはどれだけ躍進できるのだろうか。日本チームも間違いなく進化しているが、それ以上に世界の壁は厚いことも事実だ。今後もし、3度目のVCT日本開催があり得るのならば、ぜひ日本チームの応援が現地でできることを願いたいばかりだ。撮影:まいる編集:いのかわゆう【まいるプロフィール】関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
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- 【結果速報 9月7日】 「CAPCOM Pro Tour 2025 ワールドウォリアー」日本大会最初のウイナーはGO1!
- 『ストリートファイター6』の公式大会「CAPCOM Pro Tour 2025 ワールドウォリアー」日本大会 第1回が2025年9月7日(日)にオンラインにて実施され、GO1選手が今大会一度も敗れることなく、WWポイント50点を獲得した。本大会は『ストリートファイター6』の世界大会「CAPCOM CUP 12」の出場権を獲得するために各地域でオンライン開催される「ワールドウォリアー」のひとつ。オンライン大会だが、esports Style UENOにてパブリックビューイングも行われ、多くのファンが見守る中、過去最多となる2300人以上のエントリーで熾烈な戦いを繰り広げた。CAPCOM Pro Tour 2025 ワールドウォリアー 日本大会とは『ストリートファイター6』にて、世界中のプレーヤーが年間チャンピオンを目指し、各地域で激戦を繰り広げる大会「CAPCOM Pro Tour 2025」。その大会群のひとつつである「ワールドウォリアー」は、世界各地域のトーナメントオーガナイザーによって数カ月にわたり複数回開催される。「CAPCOM Pro Tour 2025 ワールドウォリアー 日本大会」は、順位に応じてポイントが獲得できる5回の通常大会と、ポイント順位上位選手8名による決勝大会の全6回で構成される。今年の日本大会は「スーパーリージョン」として位置付けられ、「CAPCOM CUP 12」の出場権を獲得できるのは2名。1名は5回の大会で最もポイントを獲得した選手。もう1名は、2〜8位までの選手の直接対決により決定する。なお、今回の「ワールドウォリアー」の成績優秀者の中から、2026年に愛知県で行われる「アジア競技大会」の日本代表選手の選考大会でもある。 ワールドウォリアー 日本大会 #1 試合結果 「ワールドウォリアー」日本大会 #1は、昨年の同大会と比べて倍以上となる2300人以上がエントリー。すべての試合はオンラインで、プールではダブルエリミネーションのBo3、トップ8以降はBo5で行われた。エントリーの中には「ストリートファイターリーグ」や世界の大会で上位に食い込むプロも多い中、チーム等に所属していないアマチュアの中からも上位に食い込む選手が多く見られた。そんな中で、トップ8のウイナーズ側には、GO1、立川、どぐら、ヤナイという「ストリートファイターリーグ」の選手やコーチとしてなどで活躍するプロたちが勝ち上がり、GO1が立川、ヤナイを下して全勝を保つ。ルーザーズ側では若手のサトルがハイタニに、海外にも積極的に挑戦しているkingvegaがリーガーのこばやんに勝利したものの、ウイナーズから降りてきたどぐらがグランドファイナルに勝ち進んだ。迎えたグランドファイナルは、この日初めての対戦カードにして、CAG OSAKA時代の元同僚という関係。GO1の春麗に対してどぐらはエレナで挑むも、思うようにタッチできずにストレートで2本を奪われたところでベガにスイッチ。昨今話題の「ドライブインパクト」を織り交ぜながらどぐらが1本取り返す。そして迎えた第4ゲーム、どぐらペースで試合が進むものの、1タッチからGO1がコンボを叩き込む意地と意地のぶつかり合い。互いに体力も時間もない中で、GO1の執拗な中段攻撃が最後にヒットし、そのままSAで勝利を決めた。最終ラウンド、GO1がどぐらをバーンアウトさせた直後に、ドライブラッシュからの中段がヒット。残り3秒からのSAで勝敗が決した(https://www.youtube.com/live/0vwXdrIONBM?si=-VKxbSh2wXaZlux6&t=17063) 優勝したGO1はWWポイントとして50ポイントを獲得。「CAPCOM CUP 12」出場に向けて大きく弾みをつけた。順位所属チーム|選手名pt1 DetonatioN FocusMe|GO1 50pt 2 Crazy Raccoon|どぐら 40pt 3 IBUSHIGIN|ヤナイ 35pt 4 kingsvega 30pt 5 NORTHEPTION|サトル 25pt = Crazy Raccoon|立川 25pt 7 REJECT|ハイタニ 20pt = Saishunkan Sol 熊本・A.M.G|こばやん 20pt 配信URL CAPCOM Pro Tour ワールドウォリアー:https://sf.esports.capcom.com/cpt/jp/ワールドウォリアー 日本大会 #1:https://www.start.gg/tournament/world-warrior-2025-japan-1/details