「MAG CH130 I REPELTEK FABRIC」レビュー
ゲーミングチェアといえば、長時間のゲームプレイでも疲れないように、一般的なビジネスチェアよりもさまざまな工夫がされている椅子だということくらいまでは想像がつくだろう。
ところが現在はリモートワークを採用する企業が増加したことで、ゲーマーだけではなく、一般ユーザーの間でもゲーミングチェアを購入する人が増えており、ゲーミングチェアの売上は上昇傾向にある。
その結果、ゲーミングチェア市場には多くの企業が参入し、1万円前後のエントリーモデルから10万円超えるものまで様々な商品がある。
MSIが2021年9月2日に発売したゲーミングチェア「MAG CH130 I REPELTEK FABRIC」は、大ヒット商品「MAG CH120 I」(市場価格3万6800円)の上位機種。MSIといえば、ゲーミングPCやディスプレイはもちろん、マザーボードやグラフィックカード、マウスやキーボード、コントローラに至るまで、PCゲーム環境を幅広く取り扱う企業だ。
そんなメーカーが発売したゲーミングチェアの最新版なのだから、その「わかってる感」は言うまでもない。
▲背もたれはかなり大きく、座甲高の筆者でもきっちりホールドしてくれた
▲背面の模様。肩付近に開いた穴を通して、クッションを固定させている
▲背面の模様。肩付近に開いた穴を通して、クッションを固定させている
手触りと丈夫さを兼ね備えた独自の新素材を採用
筆者は過去に10種類以上のゲーミングチェアに座ったことがあるが、「MAG CH130 I REPELTEK FABRIC」に初めて触れた時に感じたことは「手触りが気持ちいい」ということにまず感動した。
例えが正確かはわからないが、新幹線のグリーン席であったり、映画館の特別料金シートのような「特別感」があった。一度触るとしばらく撫でていたくなる感覚は、ぜひとも皆さんにも体感してほしいところ。
メーカー発表によると、表面に使われている素材は「REPELTEK FABRIC」という特許出願中の素材だという。手触りの良さに加えて、ペットの爪で引っかかれても裂けないような丈夫さ。さらに、飲料をこぼしても滲みない撥水加工も施されている。
猫を飼っていて、自分が座っていない間に猫が爪を出して駆け上がっても破れないという性能は、猫を飼っている人であれば「!」と感じてもらえるに違いない。
毛玉もできづらく、ティッシュなどで拭けば汚れも落ちるだなんて、椅子として理想に近い素材を採用していることに驚かされた。
▲頭から背中、腰から太ももまでが接する部分には、新素材「REPELTEK FABRIC」が採用されている
最大150度まで倒れる背もたれのお陰で、簡易ベッドとしても利用可能
「MAG CH130 I REPELTEK FABRIC」の背もたれは、かなり細かく角度を調整できる。脚と背中を直角にした、いわゆる「いい姿勢」でホールドしてくれる状態から、背もたれを水平にするところまで、8段階に調節できる。そして、この8「段階」というキーワードに注目いただきたい。
ゲーミングチェアの中には無段階に背もたれを傾け、好きな角度に調整できるというものもある。
しかし、この商品が採用したのは8「段階」で固定するという仕組みだ。背もたれ調節用のレバーを引き上げ、好みの角度でレバーを下ろす。これで背もたれはガッチリとホールドされるため、「背もたれに寄りかかったら、突然動いてしまうのでは?」などという心配はまったくない。
▲このレバーを一度上げ、背もたれを好みの角度にしてからレバーを下ろす。ガシャリ、というメカニカルな手応えが心強い
この「固定」方式が活きてくるのは、背もたれを真横近く(開き角は150度)まで倒し、膝から上をホールドする「簡易ベッド」状態にした時。角度を固定できる安心感があるからこそ、自分が真横になって寝ている状態でも動かないという安心感がある。
あまり声を大にして言いたくはないが、筆者はBMI30超え、適正体重まで+25kgの「肥満(2度)」体型だ。「こんな自分が寝ても大丈夫なのだろうか?」と不安を感じながら背もたれを倒していったが、カタログスペックによると最大荷重は150kgまで対応していた。たるんだ腹が気になる同志よ、このゲーミングチェアなら大丈夫だ。
ちなみに通常の姿勢で座っているときと簡易ベッド状態にしたときでは重量配分が大きく変わるため、寝た状態では不安定になるのではないかという不安があった。しかし実際に試してみると、背もたれに連動して座椅子部分がやや傾くギミックが効いているらしく、驚くほど安定していた。
頭と腰をサポートするランバークッションの位置を動かすことなく簡易ベッド状態にしても快適な姿勢を保てていたことにも、設計の素晴らしさを実感した。
▲背もたれを最大の150度まで倒したところ。写真では少し起き上がっているように見えるが、ここに人間が横になると真横で安定する仕掛け
▲頭の後ろを支えてくれるランバークッションは位置を変えなくても、簡易ベッド状態では快適な枕として機能する
唯一、簡易ベッド状態にした時にはアームレストに手が届きづらくなるため、手の置き場所は工夫しなくてはいけない。腹部の前で両手を握ったり、腕組みをするなどしないと、背もたれから手がはみ出してしまうのだ。
では簡易ベッド状態ではアームレストが不要かといえば、実はこれが左右にあることで、誤って寝返りをうっても落下しない安全装置になっているのは嬉しいポイント。安心して身体を預けてほしい。
▲アームレストは前後へ4段階に動く。机に近づきたい時には一番手前に動かすといい
価格帯は中級クラスだが、競合製品以上の性能を備えたゲーミングチェア
「MAG CH130 I REPELTEK FABRIC」の市場予想価格は44,800円。ゲーミングチェア市場の中だとミドルクラスの価格帯だが、ここまで説明してきたような最新技術が惜しげもなく投入されているため、実質ハイエンドチェアと言っていいだろう。
本体に使われているフレームは錆びにくいスチールフレームを採用していたり、座ったまま移動しても床が傷つきづらいキャスターを採用しているなど、目立たない部分の性能もかなりのもの。
筆者が感動したポイントは他にもある。それはキャスターやフレームの「適度なトルク感」だ。キャスターが軽く動いてしまうと、ちょっとした体重移動をしただけで椅子が動いてしまう。
しかし、この商品は座った状態で移動しようとすると適度に抵抗がかかり、座っている人が移動したい時にだけ移動するという絶妙な抵抗がかかる。
この考え方はフレームの回転軸にも活かされていて、くるりと横を向きたい時にだけ、適切な角度だけ回転する。緩すぎて安定しないとか、硬すぎてなかなか横を向かないといったことはない。
座っている人の「思い通りに」動いてくれるこの抵抗感は、筆者が過去に座ったあらゆる椅子を凌駕していた。
エントリーモデルのゲーミングチェアを1万円台で買って「こんなもんか」と微妙な気持ちになるくらいなら、安心できるMSIブランドの商品を買って長期的に使うほうが、最終的なコストパフォーマンスは高い。
4万4800円はゲーミングチェアの中で決して安い価格帯ではないが、5年、10年使うゲーム&パソコン作業用チェアとして、この商品を検討してみてはいかがだろうか。
※今回レビューに使用した製品は、MSI様からご提供いただいています。
■MAG CH130 I REPELTEK FABRIC スペック
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